July 22, 2024
【教員インタビュー】目黒公郎教授 (後編)Faculty Interview: Professor Kimiro Meguro, Dean of the III/GSII (Part2)
2024年度に新学環長・学府長に就任された都市災害軽減工学がご専門の目黒公郎先生のインタビューです。
本インタビュー記事は、前編と後編に分けて掲載します。前編は、令和6年能登半島地震をはじめとする災害対応の課題について、後編では学環・学府の今後の課題と展望をお話しいただいた内容を紹介します。
(目黒先生のご研究について紹介した2023年の教員インタビューもあわせてお読みください)
(目黒先生のご学環長のメッセージはこちら)
The following interview was conducted with the newly appointed Dean of the III/GSII, Prof. Kimiro Meguro, whose field of research is urban disaster mitigation engineering. Part 1 deals with disaster relief, particularly in relation to the Noto Earthquake that occurred at the beginning of 2024. In Part 2, Dean Meguro explains his vision for the future of the III/GSII.
(Readers may also be interested in an earlier faculty interview conducted in 2023, where Prof. Meguro talks in more detail about his research.)
(Message from the Dean: https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/about/message)
*日本語は抄訳に続く(Japanese interview text follows English summary)
Part 2
While advising on how to respond to disasters, Dean Meguro is also keenly concerned with how to improve the institutional structure of the III/GSII, which he now leads. For example, he wants to increase the opportunity for interaction among faculty and students from different fields of research. The inclusion of a diverse range of disciplines under one roof is one of the unique features of the III/GSII, but the potential for productive interaction has not always been fully realized. Each field has its valuable contribution in tackling contemporary issues, such as AI, which requires not only technical investigation but also consideration of its social and legal implications. The III/GSII provides an environment where all these aspects can be considered together through interdisciplinary cooperation.
Another feature of the III/GSII is the “floating” faculty system, in which faculty members from other graduate schools or research institutes transfer to the III/GSII for a period of a few years. This not only further enriches the diversity of the III/GSII but also helps to build university-wide personnel networks and brings benefits to the floating faculty members’ home departments. Dean Meguro would like to further enhance this “win-win” interfaculty exchange.
Following the pandemic, Dean Meguro would like to increase the opportunity for face-to-face interaction among members of the III/GSII. In particular, there is a need to allow greater informal exchange. One way to promote such exchange would be to follow the example of some universities overseas in establishing a common break time in the working day during which no classes or administrative meetings would be scheduled. During this time, members would be able to meet informally over drinks and snacks. Many of the most creative and productive ideas emerge precisely in such informal settings.
To realize this vision for the future of the III/GSII, a little more financial leeway will have to be attained. As funding from the university administration is gradually reduced, there will be an increasing need to seek competitive funds and research cooperation with organizations outside the university.
―災害対応の抱える課題には、学環・学府の現状を見るとき他山の石として考えるべき点もあるような気がします。
学環・学府は設立以来20年以上が経過し、さまざまな課題も見えてきています。教職員や学生の数にフィットした組織化ができているか? 資源が限られる中で自ら仕事を増やして、ミスやエラーを発生しやすくしていないか? 市町村の例でいえば、自力や体力に見合った仕組みを考えていないとか、局所最適解を狙いすぎで全体最適解から逸脱するような、構造的な問題が起きていないかを点検する時期であり、点検の結果、問題があれば、これを変革する必要があると思っています。
―具体的には、まず何に取り組みたいとお考えですか。
学環・学府のユニークさは、分野を超えた交流や融合が可能なことです。例えば工学系の教員はその組織の中では人文社会系や芸術系の学生に出会うことはほとんどないですが、学環・学府ではいくらでもあります。ここで生まれる人的ネットワーク、つまり、多様な分野や文化と相互に敬意をもって融合する関係はとても魅力があり、私はその融合を支える仕組みづくりに努めたいと思います。手前味噌ですが、私の所属するCIDIR(総合防災情報研究センター)ではそれが実践できており、人文社会系と理工系の研究者や学生が同じ組織内で活発に意見を交換しています。
AIを取り巻く課題の研究なども、学環・学府が、学内で一番分野横断的に取り組める課題でしょう。この分野では情報理工的な研究は当然重要ですが、一方で法制度面での検討も不可欠です。AIが生み出す様々な成果の効果的な活用法、人間に及ぼす影響の評価と対処法などについては、学環・学府の中で分野を超えた研究ができます。理工系、人文社会系、芸術系、生物統計などを融合して社会問題に解決策を示すことが、学環・学府のあるべき姿の一つではないでしょうか。
また、学環の特色のひとつに、他の研究科・研究所等の教員が、数年の期間をもって情報学環に身分を異動する流動教員の制度があります。私は流動の教員たちが学環に来られたからこそ出会える面白い教員や学生と協力して、元部局ではできなかった研究や教育を実施し成果に繋がる環境作りに努めたいと思います。これによって情報学環も成果をあげることができるし、元部局にとっても流動教員が新しい人的ネットワークや成果を持って帰ることは大きなプラスになり、双方にとってウィン・ウィンの状況が実現します。学府の学生のみなさんには、自身の能力の向上や成長のみならず、先生や周りの学生に刺激を与えて、これからの学環・学府を、ひいては東京大学や世界を大きく変えていくんだという意識を持って欲しいですね。
―パンデミックの3年間を経て、学環・学府のコミュニティのあり方についてはどのような展望をお持ちですか。
私はオンラインのメリットは保持しつつ、対面の機会を圧倒的に増やそうと思っています。アバターはいろんな可能性を秘めていますが、やはり人間はface to faceで歴史を作ってきたわけです。そういう点では、先ほど述べた融合を支える「仕組み」には、組織をめぐる大きな話だけでなく、人間単位のちょっとした工夫も効果的だと思います。海外の大学には毎日1時間ぐらいブレークタイムを設けて、教員から学生までみんなカップを持ち寄ってコーヒーや紅茶を飲みながら、お喋りする文化を持つところがあります。分野を超えたそのようなお喋りから、多くの新しいアイデアや成果が生まれるのです。ここで大事なのは、その時間帯にはなるべく会議は入れないとか、この時間が創造のために大切な時間だという意識を共有することです。学環コモンズは、まさにそういう目的に使うべきです。そこには、美味しいクッキーやチョコを用意して、あ、太っちゃうか(笑)。
私は学環・学府の人たちが交流する活動を積極的に支援したいと考えていますが、これを実現するには、学環・学府はもう少し財政的な余裕を持つべきです。東京大学を取り巻く環境も厳しさを増し、本部からの財政的な支援も減りつつあります。このような中では積極的に競争的資金を取りにいったり、社会と協働する活動を通じて研究資金を得る努力も必要です。私も精一杯努力しますので、皆様のご理解とご支援を切にお願いします。
企画:学環ウェブ&ニューズレター編集部
取材・構成:山内隆治(学術専門員)・神谷説子(元特任助教)
写真:柳志旼(博士課程・編集部)
インタビュー日:2024年2月10日
主担当教員Associated Faculty Members
教授
目黒 公郎
- 先端表現情報学コース
Professor
MEGURO, Kimiro
- Emerging design and informatics course