東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

イベント Event

August 4, 2022

第5回レジャー研究会 「テクノロジーがもたらす『新しい搾取』に抗する―Vチューバーと『身体の客体化』をめぐる問題―」The 5th Installment of Talk Series on “Inequity, Stereotypes, and Stigma in Leisure”: Against the “New Exploitation” Caused by Technology: Issues on Virtual YouTuber and the “Objectification of the Body”

2022年8月4日(木)にB’AIグローバル・フォーラム研究シリーズ「レジャーにおける格差・差別・スティグマ」は鮎川ぱて氏をお迎えして第5回研究会「テクノロジーがもたらす『新しい搾取』に抗する―Vチューバーと『身体の客体化』をめぐる問題―」を開催いたします。オンラインの開催でどなたでも参加できますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

【概要】

テクノロジーがもたらす「新しい搾取」に抗する―Vチューバーと「身体の客体化」をめぐる問題―

鮎川ぱて氏 (東京大学先端科学技術研究センター身体情報学分野稲見研究室協力研究員/東京大学教養学部非常勤講師)

バーチャル・リアリティ、メタバースなどの言葉が人口に膾炙するようになって久しい。ままならない現実空間中とは違い、バーチャル空間でその人が望む自己イメージを獲得できることを、発表者は全力で肯定する。バーチャル技術の進展は多くのトランスジェンダー当事者を救うことになるだろう。同時に一方で、旧来的な女性差別やトランス差別が、新しい技術とともに再登場しつつあることを、本発表は問題化する。そうして、現実空間(日常)にいまだ息を潜めている理不尽も延命してしまうという問題を、バーチャルYouTuberのいくらかの事例とともに考えたい。

レジャーとは、生活や労働に拘束される「日常」を脱する「非日常」であり、レジャーがあることによって、人はまた明日から続く「日常」を耐えることができる。つまり、レジャーの存在によって「日常」は延命する。日常の理不尽も延命する。レジャーと日常は、ある意味では表裏一体であり、共犯関係にあるとも言える。

2022年現在、この図式とまさしく同型であるのは、現実世界とインターネットだ。インターネット(バーチャル世界)の存在によって、現実世界の理不尽がかえって延命するということが起こりえてしまう。現実世界ではすでに許されないものとなった欲望(理不尽)が、バーチャル空間では遠慮なしに噴出する。そして欲望は確信する。「この私(欲望)は否定されるべきものではなかったのだ」。自信を得た欲望は、肯定されなかろうとも、現実世界に引き続き息を潜めて潜在することになる。出番を待つかのように。

本発表は、発表者が7月13日に上梓した『東京大学「ボーカロイド音楽論」講義』(文藝春秋)でも指摘した「テクノロジーとジェンダーの交差点で起きる問題」をより掘り下げて論じるものである。発表者は「AI社会におけるジェンダー平等とマイノリティの権利保障」という社会目標の実現を目指すB’AI Global Forumの主旨に賛同する。フロンティアにおいて再燃してしまう旧来的な差別に抗して、求められる新しい倫理とはなにか。

 

【開催情報】

日時:2022年8月4日(木)17:00~18:00(日本時間)

場所:Zoomミーティング(事前申し込み不要)

https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/85435439007?pwd=SzRLNFhxenFHRHhuZ2lJZ3BMbitTUT09

ミーティングID: 854 3543 9007
パスコード: 215494

使用言語:日本語

主催:東京大学 Beyond AI研究推進機構 B’AI Global Forum
共催:レジャースタディーズ研究会、余暇ツーリズム学会

 

【お問い合わせ】
板津 木綿子(東京大学大学院情報学環教授)
itatsu[at]boz.c.u-tokyo.ac.jp ([at]を@に変えてください)