東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

イベント Event

March 18, 2022

文化芸術におけるSDGs : シンポジウム 「持続可な社会」の技術(アート) 「生き方の幅capability」から考えるアート・社会・経済 ―――持続可能な都市の文化政治学SDGs in Culture and Arts : Symposium "Technic (Art) in sustainable society / Art, society, economy from the perspective of capability --- Cultural politics of the sustainable cities"

現在、政財官学の領域を超えてSDGsという概念、あるいは記号がさまざまな場でキーワードとなっています。「開発」「発展」を、経済の論理に閉じ込めるのではなく、文化や自然・環境等様々な「アクター」との連関において、持続可能な開発の目標(Sustainable Development Goals)を列挙するこの言葉は、限られた自然的・文化的・社会的資源のなかで生きる人びとに成熟した社会観を要請すると同時に、従来の包摂様式から漏れ出でた人びと・事柄を「社会」という舞台の上に乗せる方向性を指し示したものといえるでしょう。この言葉のインフレ気味の氾濫(と使用文脈)に批判的な姿勢をとる論者も少なくありませんが、大きな方向性について全否定する人は多くはないでしょう。

私たちの文化庁事業「文化芸術におけるSDGsのためのファシリテーター育成事業」では、一見雑然と映る「開発目標」のそれぞれの連関と軸を、「capability(潜在能力、生き方の幅)」という概念を携えて主流派経済学を内在的に批判し、広義の倫理を開発経済学や厚生経済学に持ち込んだアマルティア・センの思想に着目して、SDGsの思想的・実践的意義の深化を図ってきました。

このシンポジウムでは、SDGs的な課題が具体的・物理的な形で顕在化する「都市」と、その都市を文科的に表象すること/都市において文化表象することを、大きな枠組みとして設定し、かけがえのない差異を内包した人びとの潜在能力をいかにして生活世界において実装するか、について考えていきます。相互に還元不可能で多元的な人びとの差異・潜在能力を、「持続可能」な形でいかにして「発展」させていくのか。都市とはまさしくそうした試みが現実化する場であるといえるでしょう。思えば、数十年来、都市論、都市研究の文脈では、スマートシティ、コンパクトシティなど「持続可能」な生活世界の再生産様式について多くの議論と実践がなされてきました。そうした流れも鑑みつつ、都市と文化、そして切実なSDGs的課題、人びとの包摂とが、どのような連環を描いているかを考えていきたいと思います。

ゲストとして、キュレーションの現場で都市や地域を捉えてこられた蔵屋美香さん、都市を往還しつつ社会を問い続けるアートを展開している川久保ジョイさん、都市を舞台としてその系譜と展開を描いてきた社会学者の吉見俊哉さん、ドラマトゥルギーの研究・実践、地域での舞台=場の構築をされてきた岸本佳子さんをお迎えし、本事業にかかわってきたスタッフである北田暁大、粟生田弓、BARBARA DARLINgとともに、クロストークを行います。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

 

日時:2022年3月18日(金)19:00-21:30
申込:https://forms.gle/ZbLrba9bwuRB9Fdr8(Googleフォーム)
会場:Online / Zoom ウェビナー
定員:500名
言語:日本語
参加費:無料

※視聴リンクは開催前日18:00までに、登録いただいたメールアドレスにご案内します。お送りする情報の第三者への共有や譲渡はご遠慮ください。

※録画・録音、写真や動画撮影、スクリーンショット等はお控えください。

※今後の事業のため、記録(録画・録音)させていただきますのでご了承ください。

※本セッションの記録の配信予定はありません。

※入力いただいた個人情報(姓名、所属・肩書き、メールアドレス)は、本セッション以外に使用いたしません。

主催:東京大学 文化芸術におけるSDGsのためのファシリテーター育成事業

文化庁 令和3年度 大学における文化芸術推進事業

問い合わせ:utacl2020@gmail.com

 

登壇者

川久保ジョイ(アーティスト)
スペイン生まれ。2003年筑波大学人間学部心身障害学卒業。同大大学院人間総合科学研究科博士課程中退後、金融業界にてトレーダーとして活動。現在は東京とロンドンを中心に活動中。
写真、映像、ネオンやテキストなどを用いた多メディア・インスタレーションで特異的な歴史を普遍的な問題へと媒介して行く作品を制作する。また近年は原子力の問題、金融、歴史など人間の営みに焦点を合わせ、時間や価値観の軸の中のかけ離れた点を提示する作品群を制作している。
現在日本におけるアーティストやアート関係者のための労働組合や圧力団体、また情報共有のプラットフォームとして機能し得るネットワーク形成に向け、アーティストが主導する運動アート・フォー・オール(art for all)に関わっている。

岸本佳子(北千住BUoY代表/芸術監督)
北千住BUoY代表/芸術監督。演出家・ドラマトゥルク・翻訳家。2017年に複合アートスペースBUoY立ち上げ以降、年間プログラム、全体のディレクションを担当。米国コロンビア大学芸術大学院(MFA)修了。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。2009年より多言語劇団「空(utsubo)」主宰。2014年『林さん』作・演出にて芸創connect vol.7最優秀賞受賞。これまでに、東京大学、東京女子大学ほか兼任講師。

蔵屋美香(キュレーター/横浜美術館館⻑)
千葉県生まれ。千葉大学大学院修了。東京国立近代美術館勤務を経て、2020年より横浜美術館館長。主な展覧会に、「ヴィデオを待ちながら―映像、60年代から今日へ」(2009年、東京国立近代美術館)、「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」(第24回倫雅美術奨励賞、2011-12年、同)、「高松次郎ミステリーズ」(2014-15年、同)、「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」(2015年、同)、「没後40年 熊谷守一:生きるよろこび」(2017-18年、同)、「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(2019-2020年、同)、「すみっこCRASH☆」(2022年、無人島プロダクション)など。第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館の田中功起個展「abstract speaking: sharing uncertainty and other collective acts」(2013年)で特別表彰。おもな著作に『もっと知りたい 岸田劉生』(東京美術、2019年)他。
術奨励賞、2011-12年、同)、「高松次郎ミステリーズ」(2014-15年、同)、「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」(2015年、同)、「没後40年 熊谷守一:生きるよろこび」(2017-18年、同)、「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(2019-2020年、同)など。第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館の田中功起個展「abstract speaking: sharing uncertainty and other collective acts」(2013年)で特別表彰。おもな著作に『もっと知りたい 岸田劉生』(東京美術、2019年)他。

吉見 俊哉(東京大学大学院情報学環教授)
1957年、東京都生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。
社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。
著書に『都市のドラマトゥルギー』『五輪と戦後:上演としての東京オリンピック』など。

モデレーター

北田暁大 (東京大学大学院情報学環教授)
粟生田弓(東京大学大学院情報学環特任助教)
BARBRA DARLINg(アーティスト)