東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

November 1, 2022

【マイブック】『集合的記憶と想起文化 ー メモリー・スタディーズ入門』(山名淳 教授)【My Book】Prof. YAMANA, Jun

「マイブック」は、学環学府の教員・学生による著書を紹介するシリーズ記事です。著者からの一言とともに、新刊情報を中心にお届けします。新刊情報は学環学府ニューズレターの「BOOKS」コーナーでも紹介しています。(編集部)

『集合的記憶と想起文化 ー メモリー・スタディーズ入門』
アストリッド・エアル(著)、山名淳(訳)

私は教育哲学・思想史を専門としており、ドイツの研究者とともに戦争や災害の記憶を伝える文化的仕組み(学校のみならずミュージアムやモニュメントなども含む)について考えるうちに、記憶と想起の理論と実践という問題領域に辿り着きました。拙訳書は「集合的記憶」と「想起文化」に関する諸研究を俯瞰する定評のある入門書であり、同時にその内容は専門家にもお読みいただける厚みのあるものでもあります。社会学、心理学、歴史学、芸術論、文学研究、メディア論など、扱われている学問分野は幅広く、訳業を通じて私自身が非常に多く学びました。本書が学際的なコミュニケーションの活性化の一助になることを願っております。(山名淳)

発行年月:2022年8月
出版社:水声社

 

目次

第一章 なぜ「記憶」が問題なのか――導入
第一節 「記憶」に注目する理由
第二節 なぜ「記憶」がまさに今日取り上げられるのか
第三節 「集合的記憶」とは何を意味するのか
第四節 重要なのは記憶、想起、あるいは忘却か
第五節 本書の課題および構成

第二章 集合的記憶の発明――文化科学における記憶研究の概観
第一節 モーリス・アルヴァックス――集合的記憶
第二節 アビ・ヴァールブルク――ムネモシュネ、情念定型とヨーロッパの図像記憶
第三節 ピエール・ノラ――記憶の場
第四節 アライダ・アスマンとヤン・アスマン――「文化的記憶」
第五節 「想起文化」――ギーセン特別研究センター434の構想

第三章 記憶――各学問分野におけるアプローチおよび学際的なネットワークの可能性
第一節 記憶の歴史性と社会性――歴史学および社会科学
第二節 記憶の具象性――芸術および文学研究
第三節 記憶の精神性――心理学の記憶研究

第四章 集合的記憶と想起文化――文化記号論的モデル
第一節 メタファー――集合的次元における記憶、想起、そして忘却
第二節 想起文化の物的、社会的、心的次元
第三節 文化の自伝的、意味的、手続き的な記憶システム
第四節 隣接する概念――集合的アイデンティティ、経
第五節 〈想起の様式〉――コミュニケーション的記憶と文化的記
第六節 想起の向こう側――忘却と未来
第七節 流動する想起――超文化的な視点および超国家的な視点

第五章 メディアと記憶
第一節 メディアによる記憶生成
第二節 メディア史としての記憶の歴史
第三節 集合的記憶のメディア――想起文化論の圧縮概念
第四節 記憶メディアの機能
第五節 メディア文化科学における記憶研究

第六章 集合的記憶のメディアとしての文学
第一節 想起文化の象徴形式としての文学
第二節 文学テクストと想起文化のコンテクスト――ミメーシス
第三節 〈集合的記憶〉と〈集められた記憶〉のメディアとしての文学

第七章 物語論のカテゴリー――集合的記憶のレトリック
第一節 集合的記憶のレトリック――五つのモード
第二節 経験型モードとモニュメント型モード
第三節 歴史化モード――文学における歴史記述
第四節 闘争型モード――文学的な想起の抗争
第五節 省察型モード――想起文化についての文学の観察
第六節 想起の歴史に関するナラトロジーの視点

訳注
文献一覧
人名索引
事項索引
訳者あとがき


主担当教員Associated Faculty Members

教授

山名 淳
  • 文化・人間情報学コース

Professor

YAMANA, Jun
  • Cultural and human information studies course