東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III/GSII

研究Research

December 12, 2024

【教員インタビュー】澁谷遊野准教授 (後編)Faculty Interview: Associate Professor Yuya Shibuya (Part2)

社会情報学コース社会情報・空間情報科学のご研究をする澁谷遊野先生のインタビューです。

本インタビュー記事は、前編と後編に分けて掲載します。前編ではご研究テーマとそれに至った背景について伺いました。後編では、澁谷先生が研究の場で大切にされている視点・アプローチと学府・学生へのメッセージを伺いました。(前編)

The following interview was conducted with Associate Professor Yuya Shibuya , whose field of research is Spatial Information Science and Socio-information. Part 1 deals with her research topic and the background leading to it. Part 2 focuses on the values and perspectives she adopts in her research, as well as her message for the graduate school and students. (Part1)

日本語は抄訳に続く(Japanese interview text follows English summary)

 

Part 2

In the second part of the interview Prof. Shibuya talked about her stance towards research and her message for students.

Prof. Shibuya emphasizes the importance of maintaining regular communication with those who might use and implement the results of data analysis and modeling to avoid potential misunderstanding. While recognizing the impossibility of entirely eliminating bias, she sees a need for critical reflection and review, for example by leveraging civic tech, where citizens use ICT to solve social problems. Besides working on her own research, she keeps copies of previous studies (in both digital and printed format) with her to read whenever she has free time.

During her own studies, Prof. Shibuya herself experienced the familiar graduate student anxiety about achieving originality in one’s research, especially when encountering prior research publications with similar issues and approaches to one’s own. She advises those who are now studying for their degrees to remain true to the questions and problems that really motivate them. She also stresses the importance of exposure to previous research, since it is precisely through reading large quantities of previous studies that one can refine one’s own aims and develop novel ideas.

Prof. Shibuya hopes that students in the GSII will maintain critical perspectives while stubbornly pursuing research topics that truly interest them. Looking back on her own time in graduate school, she notes the importance of the GSII in widening her perspective and providing opportunities and crucial support for her research activities.

 

ー 澁谷先生がデータと向き合う上でフラットな視点を保つために、気をつけていらっしゃることがあればお伺いしたいです。 

都市空間情報の可視化やシミュレーションの結果を地域の方などさまざまな方にみていただく機会もありますが、学術的な結果を実際に使っていただく人に伝えることは簡単ではありません。私たちが意図しているように解釈してくれるとは限らないし、場合によってはものすごくマイナスな方向に動いてしまう可能性もあります。なので基本的なことではありますが、実装前や実装中には定期的にユーザーや関係者の方とお話をするということを心がけています。

また、大前提として、中立的なデータは存在せず「データの裏には必ず人がいる」ということを日々意識して活動をしています。シミュレーションやモデリングをする前には、バイアスを軽減することを心掛けています。またデータそのものを批判的に捉え直す議論などにも積極的に参加しています。例えば、シビックテック(市民参加型のデータ・デジタル活用)のアプローチに基づいた研究活動にも取り組んでいます。

 

ー 澁谷先生はレビューを大切にされていると思われますが、レビューと実装のバランスはどのようなかんじですか。

私の感覚値と実際の数値が違っているような気はしますが、感覚値的にはレビューの方が多いと思います。

レビューするときは、パソコンだけではなくて携帯(アプリ)にも全部ダウンロードして、移動中をはじめ暇があれば読んでいます。またバッグには紙の論文や本も入れてデジタルの情報と併用しています。実はずっとデジタル派だったんですけど、最近紙の本や論文も持つことがあります。

メモ書きはほとんどデジタルでして、時に手書きのメモをすることがあってもデジタルで管理するようにしてます。

 

ー 大学院生の悩みの一つである「どういうふうに問いを見つけてるか」ということについて経験談をお聞かせください

皆さんに共通する悩みかもしれませんが、私も学生時代は特に新規性などをうまく答えられなくて非常につらかった記憶はあります。今も学生によく受ける相談の一つは、「自分が取り組んでいる研究と似たような研究論文を見つけてしまってどうしたら良いかわからない」というものです。私自身も似たような経験があるので気持ちはわかります。大前提として、やはり自分が解きたい問いとか、探求したいもの、解決したい社会課題などがあれば、その思いや原動力は大切にしてほしいし、突き詰めてほしいと思います。また、悩みがある時こそとにかくたくさんの先行研究を読み込むようにしています。先行研究を読み込んではじめてひらめきの瞬間やアイデアが生まれます。学生にも「すぐに新しいことを自分で考えようと思っても無理なので、新しいこと考えるためにはもうその何倍も何10倍も何100倍も他の研究を読み込んで、その中から生まれて来るヒントを大切にしようね」という話はしています。

 

ー 今後、学生には、どんなものを求められますか?また、情報学環で学生という学府の院生を経て、今学環の教員としていらっしゃる立場で、学環・学府への思い入れはありますか。

学生の皆さんには、批判的な思考の観点も持ちつつ、探求力と継続力を持って、何か面白いと思うことや関心のある課題に打ち込んでいただければと思います。

私は学部卒業後、民間企業勤務を経て大学院に入ったということもあり、本当にいろんな経験をさせていただきました。いかに自分が見ていた世界が狭かったのかっていうのをものすごく思い知った修士の2年間、そして研究もとても面白くて、気がついたら博士号までいただいてたっていう感じです。もちろん、学際情報学府だけじゃなくて、工学系のリーディング大学院での経験も大きかったです。

学生時代の情報学環は、色んな機会・挑戦する方には、どんどん機会をくださる、背中を押してくれた場所だと思っています。

 

 

企画:学環ウェブ&ニューズレター編集部
取材:開沼博(准教授)・畑田裕二(助教)・山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任助教)・柳志旼(博士課程・編集部)
構成:山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任助教)
英語抄訳:デービッド・ビュースト(特任専門員)

インタビュー日:2024年7月2