東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III/GSII

研究Research

November 8, 2018

【フォトーク】教員インタビュー 筧康明 准教授(後編)【Photalk】Interview with Associate Professor KAKEHI, Yasuaki (Part2)

編集部では、写真から話をふくらませるインタビュー記事「フォトーク」シリーズを新たに企画しました。第1回は、学府の卒業生であり、2018年度より情報学環に着任された筧康明先生にお話を伺いました。現在の研究についてだけでなく、院生時代の写真も掘り起こして頂きました。上の写真とともにご覧ください。

The editorial team delivers a new article series called “Photalk” which covers interviewees’ photos and assorted stories. As the first guest, we interviewed a newly appointed associate professor, Yasuaki Kakehi, who is a graduate of GSII/III. In this second part of the interview, Assoc. Prof. Kakehi described how he conducted research at Keio SFC and MIT Media Lab, and also introduced new work at YCAM and his current research field (Please also see Part1).

(インタビュー前編はこちらからご覧ください)

写真3(右上):慶應SFCの筧研究室

ー SFCにも色々な分野の人が混ざっている印象があります。

筧:僕の10年間所属していた慶應SFCのx-Design(XD)プログラムは色んな背景の人が混ざっていますね。グラフィック、音楽、建築、時には看護の人が来たりとか。XDの先生たちは常に積極的に新しい学際的なつながりを作ろうとしている。僕の研究室は、最初はすごく小さい部屋で10人ぐらいが床ではんだ付けしているような状態でした(笑)。そこで山中俊治先生や他にも何人かの先生とご一緒したりしてすごく楽しかったですね。そのあと場所が移って、田中浩也先生や水野大二郎先生の研究室と部屋を共有していました。この写真はその研究室の様子を写したものです。SFCはこういう複数の研究室が同じ部屋を使う文化があって、他の研究室の学生が相談に来たりすると僕は面白がって話を聞いていました。指導教員が言っても聞かないことを他の先生が言ったら素直に聞くこともあって、実は裏で教員同士話し合ってたりしましたけど。

ー 先生はその後MITのメディアラボにも着任されました。学環・SFCと比較してメディアラボはどのような場所でしたか?

筧:メディアラボも基本的に研究室の間に壁があまりなくて、学生や教員同士相談したり競い合ったりしていました。異なる分野の学生でも一緒に授業を受けることで交流していました。やっぱり圧倒的な広報力があるので、例えば、昨日授業で実装したものが今日ものすごくバズっていることがある。そうなるとモチベーションになりますよね。教員同士の関係を飛び越えて、勝手に学生同士で一緒にやってることとかもあったりして。そうやって繋がりながらも、最終的には自分の専門分野で先端的な研究成果もきちんと出す。SFCや学環も同じですね。あと、個々のつながりだけではなく、金曜日にはみんなで集まってお茶しようっていうラボ全体のイベントデザインなどもよく機能していたと思います。

ー かつて荒川研究室でも研究室や大学をまたがった集まりがあったと聞きます。

筧:それがメディアラボではトップダウンのルールになっていました。学環でもやればいいんですよね。各研究室持ち回りで。今週は暦本研みたいな。

写真4(大&左上):「布のデミウルゴスー人類にとって布とは何か?」
※山口情報芸術センター(2017年12月〜2018年3月)での展示より

ー あらためて先生の専門分野について教えてください。

筧:HCIや現実拡張の技術研究を中心に、応用や表現としてのプロダクトのデザインやメディアアート作品制作まで一気通貫に行なっています。最近のプロジェクトだと、メディアラボから戻ってすぐYCAM(山口情報芸術センター)と、西陣織の老舗である株式会社細尾と新しい「布」をつくるプロジェクトをやりました。西陣織にはもともと「箔」という、 和紙に金箔や銀箔を塗ったものを糸として用いるなど、表現のために異質なものを取り込む文化があります。僕らはその箔という手法に着目して、温度が変わると色が変わったり、硬さが動的に変わる素材など、伝統的な工芸から見ると異質なマテリアルをデザインし織り込むことで、職人と共に新しい布の美や機能を生み出すことを目指しています。
 最近取り組むものの多くは、デジタルベースなんだけどフィジカルなインタラクション。時にはコンピューターを使わなくても動的な世界を作れる。今までインタラクションに取り入れられてこなかったもの、例えば生き物、食べ物みたいな身体や自然を含むオーガニックなものを巻き込んだ体験のデザインについて考えています。

ー 筧先生の研究室は、先端表現情報学コースだけでなく、文化・人間情報学コースからも学生をとります。どうして両方から取ることにされたのでしょうか?

筧:理系的背景を持つ学生だけではなく、どうやったらアートやデザインのような、多様な学生を取ることができますかということを聞いた時にこの方法を教えてもらいました。そういう人がいないと化学反応が起こらないので、仕組みとしてまたがることにしたんです。
 今は、エンジニアリングの基礎といわれるものを全て修めてはじめてモノを作れるようになるという時代ではないですよね。モチベーションを見つけてからその術を得るということが可能なので、むしろある限定された専門分野の人だけを取ると釣り合いが悪くなっちゃう気がしています。できるだけちょっと違うタイプの人がテーブルを囲む状況、いわばラボの中にも小さな学環みたいなものを作りたいんです。

企画:ウェブサイト&ニューズレター編集部
聞き手・文章構成:城啓介(博士課程)、鳥海希世子(特任助教)
英文校正:デイビッド・ビュースト(特任専門員)


主担当教員Associated Faculty Members

教授

筧 康明
  • 文化・人間情報学コース
  • 先端表現情報学コース
  • アジア情報社会コース

Professor

KAKEHI, Yasuaki
  • Cultural and human information studies course
  • Emerging design and informatics course
  • ITASIA program