東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

November 1, 2018

【フォトーク】教員インタビュー 筧康明 准教授(前編)【Photalk】Interview with Associate Professor KAKEHI, Yasuaki (Part1)

編集部では、写真から話をふくらませるインタビュー記事「フォトーク」シリーズを新たに企画しました。第1回は、学府の卒業生であり、2018年度より情報学環に着任された筧康明先生にお話を伺いました(写真大)。現在の研究についてだけでなく、院生時代の写真も掘り起こして頂きました。上の写真とともにご覧ください。

The editorial team delivers a new article series called “Photalk” which covers interviewees’ photos and assorted stories. As the first guest, we interviewed a newly appointed associate professor, Yasuaki Kakehi, who is a graduate of GSII/III. In this first part of the interview, Assoc. Prof. Kakehi told us about memories of Ars Electronica Campus Exhibition in 2008 and the “President’s Award of the University of Tokyo” with precious photos (Continues to Part2).

写真1(左上):アルスエレクトロニカ キャンパス展の集合写真(2008年)
アルスエレクトロニカとは、1979年よりオーストリアのリンツで開催されているアートとテクノロジーをめぐる世界最大級の祭典。2001年から始まったキャンパス展では、それまで美術大学などが主催校として参加。2008年9月、総合大学として初めて選出された東京大学が“Ars Erectonica Campus 2008: Hybrid Ego”を開催した。

筧:学環の思い出としてまず見つけたのが、この写真です。2008年で僕はもう学生ではなかったのですが、“Tablescape Plus”というプロジェクションを用いたインスタレーション作品を出していました。2007年から準備をして、2008年4月に慶応大学に移ったのですが、9月にこれをやっていた。なので、僕としてはこのアルスを終えるまでは卒業した感覚にならず、僕にとっての卒業記念写真です(笑)。このキャンパス展は、学環のどこかでしっかり取り上げられるべきものですよね。最初の学府展(東京大学制作展の前身)は2001年でしたが、僕はそこで受付をしたんです。学部生の頃でした。その時はまだメディアアート感はなくて、デザイナーやアーティスト、建築家みたいな人がいて。でも、(メディアアートの)芽生えみたいなものはあって、渾然一体とした空気がとても面白かった。そこから始まって、2008年のアルスが僕にとっては学生時代のクライマックスです。

写真2(右上):総長賞受賞(2005年)
※左は苗村健准教授、右は小宮山宏総長(肩書きは、共に2005年当時)

筧:あまり昔の写真がなくて、もう一つ見つけたのがこの写真です。博士課程2年のときで、学環で初めての総長賞だったんです。駒場まで行って、ものすごく早口で喋って、モヤモヤしながら帰ってきた、という記憶があります(笑)。発表は10分程で、総長賞を授賞した人がみんなする。僕の勝手な当時の印象ですけど、東大のなかの一番偉い人たちが目の前に全員並んでいるところで。そこでインタラクションとか、メディアアートの話をしたのですが、当時は、研究の文脈で表現や体験の話をする?という空気がまだちょっとあった。

ー 研究としてどう位置づけられるのか、ということでしょうか?

筧:むしろ研究として認めるのかどうか。これは研究なのかアートなのか、工学なのか、みたいな話もあるし、研究なのか表現活動なのかというのもあるし。それが、研究として表彰されたんですね。総長賞って課外活動にも賞を与えるので、でも研究の枠だったんです。それがすごく嬉しくて、この領域の価値を伝えるすごいチャンスだと思ったんですけど…当時はまだずっと言葉を探していました。分野の違う人に対して、どう伝えたらいいんだろうってことをずっと模索していた頃です。

ー 当時の学環のなかではどうだったのでしょうか?

筧:学環は今よりももっと渾然一体としていて、工学系、情報系、建築系、社会学系の学生が、密にずっと一緒にいる感じでした。そのなかにいると自分のバックグラウンドを背負って戦わないと、自分のやっている分野が面白くないって思われちゃう。だから、いかに自分のやっていることが面白いかっていうのを競い合う、みたいな感じはありました(笑)。修士課程の時には、みんなで建築のコンペに応募したりもしました。都市の中に情報を取り入れる方法を提案したり、情報テクノロジーみたいなところから街のあり方を考えるようなシナリオをつくったり。自分の分野で活躍すればいいってわけではなくて、違う分野の人同士が集まったからこそ、どの分野を倒しに行くか!みたいな雰囲気がありましたね。

ー それは授業などではないのですよね?

筧:サークルでもないし…何だったんでしょうね。いつも一緒にいる人たちでした。常にみんな一緒に授業を受けていて、夢を語ってコンペに出す、みたいな(笑)。1クラスの人数も20人程だったので、大体みんなの名前も知っていました。

ー 今の学環とは違いますね。

筧:当時は学環ができてすぐでまだ何もなかった(笑)。きちんとしたシステムがあることに対するメリットとデメリットがあって、多分当時もそういう空気を使いこなせない人達はいたと思います。ただそれを楽しみながらやっている人達もいた。人数が多くなってくると、どこかシステマチックにやらないといけないところが出てくる。僕もこう話していますけど、すごい繋がりたいっていうタイプではなく…放っておけばラボにこもっているような人間です。やっぱり今と比べてサイズが小さかったことと、そこにいる人たちの話が面白かったのが大きいかな。逆に、何者かでいないといけないプレッシャーがあるから、友達と話して、ネタを仕入れるために自分の領域に戻って、また友達と話して。専門性を高めるための引きこもりと、学環を楽しむこととを行き来していました。

後編へ続く)

企画:ウェブサイト&ニューズレター編集部
聞き手・文章構成:城啓介(博士課程)、鳥海希世子(特任助教)
英文校正:デイビッド・ビュースト(特任専門員)


主担当教員Associated Faculty Members

教授

筧 康明
  • 文化・人間情報学コース
  • 先端表現情報学コース
  • アジア情報社会コース

Professor

KAKEHI, Yasuaki
  • Cultural and human information studies course
  • Emerging design and informatics course
  • ITASIA program