東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III/GSII

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September 16, 2022

劉兆媛さん(2021年社会情報学コース博士課程修了・高木聡一郎研究室)が社会情報学会で2022年度大学院学位論文賞(博士論文賞)を受賞しました

劉兆媛さんの研究は、ビッグデータが活用できる時代において、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)をどのように革新できるかについて、自治体の計画策定や観光政策などを題材として明らかにしたものです。近年ではソーシャルメディア等、リアルタイムに大量のデータが生成されるサービスが普及しており、これらのいわゆるビッグデータを活用することによって、EBPMに革新をもたらす可能性が出てきています。本研究はこうした環境変化において、EBPMにビッグデータを活用する可能性を、具体的に検討していくものです。

論文の前半では、EBPMの現状と課題を日本と英国の国際比較を行いながら精緻に分析しています。日本の課題を会議の議事録分析から明らかにしたほか、英国については地域計画や住宅政策におけるEBPMの現状について、政策文書の丹念に分析してその特徴と課題を明らかにしています。

論文の後半では、実際にビッグデータを用いたEBPMの試行を行った結果を提示しています。SNSを活用した観光振興策の有効性、GoToトラベルキャンペーンが人流に与えた影響、英国における住宅価格へのインターネット検索数の影響等を分析しています。これらの分析を通じて、ビッグデータの中でも、ソーシャルメディアのデータ、インターネット検索数、モビリティデータなど、人の行動に付随して生成されるデータ(Human-generated Big Data)が、政策サイクルの中で、特に政策形成や評価のフェーズにおいて有効に活用し得ることを示しました。

本研究は急速な技術進化が、政策評価にいかなる変革をもたらしうるかを明らかにしようとする意欲的な研究であり、そのアプローチは堅実性と先進性を兼ね備えたものです。

【劉兆媛さんのコメント】
指導教員の高木先生、田中先生をはじめ、学府の諸先生から長年に渡ってご指導いただいたことに対して、感謝の意を申し上げます。この博論は学府ならではの学際的な雰囲気の中で生まれたもので、多分野の研究者との密接な交流の中で蓄積されたものです。今後もこのような学際的な知識と方法を生かしながら、実社会に貢献できるように研究し続けていきたいと思います。