September 13, 2021
安本真也さん(社会情報学コース博士3年・関谷研究室)が令和3年度日本自然災害学会 学術奨励賞を受賞しました
氏名:安本真也
所属:社会情報学コース 博士3年
受賞した賞の名称と簡単な説明: 令和3年度日本自然災害学会 学術奨励賞
(自然災害科学における学術の進歩発展に寄与し、独創性と将来性に富むと認められる若手研究者の業績に送られる賞)
題目:平成30年7月豪雨における西予市での住民の避難行動と 避難の意思決定構造
受賞された研究について:
本研究は、平成30年7 月豪雨によって被害を受けた愛媛県西予市で実施した、消防団に対するヒアリング調査ならびに、住民に対するアンケート調査で得られた結果です。早朝のダムの緊急放流という状況で、多くの方が避難行動がとられました。その背景には消防団の方の働きが非常に大きかったのですが、その実態は円滑に進んだわけではなかったという実態も明らかになりました。
また、住民のアンケート調査も行い、次の避難行動を考えたときに、「自己責任」が心理的要因としてみられました。これは、短時間で多くの人の避難し、命が助かったという結果ではないかと考えられます。こうした避難に対する心理的要因は時間の経過とともにどのように変化するのか、今後の課題であり、風化を考えるうえでも必要な研究になると考えております。
受賞理由:
本論文は、被災経験の有無が避難行動にどのような影響を及ぼすのかを、平成30年7月の愛媛県西予市野村町における水害時の事例をもとに考察したものである。
地元消防団に対するヒアリング調査並びに住民に対する質問紙調査という多面的なアプローチで当該地域における住民の避難行動プロセスを詳細に解明しており、実際の避難行動とるうえでなにが重要であったかを明らかにした点が非常に興味深く、かつ防災上きわめて有益な研究結果が得られていると高く評価できる。
アンケートの因子分析により避難の意思決定構造を明らかにし、既往研究結果との比較を行っている。その結果、住民は自分の判断に加え、他者からの情報(規範)が意思決定に強く影響することなど既往研究を支持しつつも、経験を通じて学びの効果が現れていることを示唆しており、傾聴に値する。専門者(消防団員)からの避難呼びかけが強く避難意思決定に影響し地域全体での避難意識を高めるとの指摘などは、他の自治体にも有益な情報となるであろう。
また、論文は読みやすく、完成度も高いものと評価できる。
よって、自然災害科学における学術の進歩発展に寄与し、独創性と将来性に富むと認められるので、学術奨励賞にふさわしいと判断された。
リンク:日本自然災害学会(https://www.jsnds.org/)