February 20, 2020
「プラットフォームとしての都市」に関する研究の開始Launch of the Research Project on “City as a Platform”
〇概要
国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:五神真)大学院情報学環は、三菱地所株式会社(本社:東京都千代田区、執行役社長:吉田淳一)と共同で、「プラットフォームとしての都市」に関する研究プロジェクトを2020年2月下旬より開始します。
都市の経営はこれまでにない環境変化への対応を迫られています。AIやIoTなどのデジタル技術の活用、知識経済化・イノベーション経済化に対応した創造の場の提供、生活の質(QOL)の確保などを、グローバルな地理経済的変動という文脈の中で検討していく必要があります。とりわけ、創造性やイノベーションのケイパビリティが重要性を増す中、人々の間での有効なインタラクションをどう生み出すか、また人材を惹きつけるために創造性や生産性を高める場と、豊かな生活環境をどう両立できるかが課題となっています。
人々の働き方に着目すると、終身雇用を前提とした企業労働者中心の時代から、兼業・副業、起業家、フリーランス、クラウドワーカーなど、個人に立脚して働く場面が増加しつつあります。こうした「個人化」が加速する社会においては、人々の間でいかに有効な「つながり」と「価値交換」を行えるかが重要ですが、こうした仲介の機能はいわゆるデジタル・プラットフォームによって担われる場面が多くなっています。経済活動における人々のつながりと価値交換の主たる場であった企業組織に対して、デジタル・プラットフォームが存在感を増す中で、人々が集い、価値を交換するリアルなプラットフォームである「都市」がどのような役割を果たすべきか、今後の都市のあり方を考えるうえで極めて重要な観点であると考えられます。
また、デジタル・プラットフォームは一般的に強力なネットワーク効果を持ちますが、都市には地理的・物理的制約があり、こうした無限のネットワーク効果を実現することは容易ではありません。物理的制約を所与とした「都市」の戦略を考えるためには、ネットワーク効果に特徴づけられる「デジタル空間」との関係をどのように位置づけるかを検討する必要があります。さらに、都市がデジタルでは充足できないニーズに応えつつ、従来とは異なる新たなプラットフォームとしてどう進化することができるか、そのデザインを明らかにすることが必要です。
そこで本研究では、デジタル技術の高度化、産業構造の個人化、創造性の重視などの環境変化に対応し、都市が新たなプラットフォームとしてどのような役割を果たすことができるか、そのグランドデザインを描き、具体的な施策を検討することを目的として開始します。特に、物理、組織、情報空間の各レイヤー間の相互作用に着目し、デジタル時代に適した都市のデザインと経営の戦略を明らかにします。
〇関連メンバー(五十音順)
印出井一美 千代田区役所 景観都市計画課長
越塚登 東京大学大学院情報学環 学環長・教授
酒井麻千子 東京大学大学院情報学環 准教授
櫻井 美穂子 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授
重松 眞理子 三菱地所株式会社開発推進部 都市計画室長
庄司昌彦 武蔵大学社会学部 教授
高木聡一郎 東京大学大学院情報学環 准教授*
中尾彰宏 東京大学大学院情報学環 副学環長・教授
福地真美 東京大学大学院情報学環 准教授
吉村有司 東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授
*研究代表
〇本件に関するお問い合わせ先
東京大学大学院情報学環 高木聡一郎研究室 〒113-0033東京都文京区7-3-1
https://takagilab.wordpress.com/