東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

June 4, 2020

【教員インタビュー】越塚 登 教授(後編)Interview with Professor KOSHIZUKA, Noboru (Part2)

今こそ学環の時代 「スマートシティ」にみる連携の広がり
越塚 登 教授 (前編)

2019年秋に新学環長・学府長へ就任された越塚先生にお話を伺いました。スマートシティをめぐる研究活動について、また、今年度20周年を迎える学環学府について現在の思いを語って頂きました(取材日:2020年2月7日)。

The Interfaculty Initiative’s Time Has Come: Expanding Networks and the Smart City
An Interview with Prof. KOSHIZUKA, Noboru

In this interview, Dean Noboru Koshizuka, who assumed the deanship of the III/GSII in Autumn 2019, told us about his own research and his vision for the Interfaculty Initiative in this year of its twentieth anniversary (Interview date: February 7, 2020).

(Part 2) The present-day society is precisely the kind of information society predicted twenty years ago when the GSII/III was founded. In this sense, Dean Koshizuka believes that the Interfaculty Initiative’s time has come. The influence of information is found not only in the field of technology but is also linked to major transformations in the areas of business, law and media. Although the importance of the III/GSII is now beyond doubt, Dean Koshizuka believes that more must be done to realize its potential contribution to society. The interdisciplinary aspect of the III/GSII is of crucial importance in this endeavor. For example, the application of smart city technology in different parts of the world requires a sophisticated understanding of the unique cultural environments of each city and region. Technologists must therefore cooperate closely with experts in the humanities and social sciences. The III/GSII has now produced a number of graduates who are making a significant impact on society in a whole range of fields. Dean Koshizuka hopes that the current students will continue to challenge themselves and not lower their own standards bearing in mind that “one success is worth the price of nine failures.” (Interview Part 1)

 
(インタビュー前編はこちら

— 学環長としての越塚先生に伺います。今年度、学環学府は20周年を迎えますね。

そうですね。前向きなことを言うならば、今こそ学環の時代になったよね、というのが正直な思いです。20年前に、未来の情報社会はこうなるから、東京大学のなかで情報の研究をリードするために学環学府ができたけど、多分そのときに言っていた状態がまさに実社会になっている。技術だけでなく、法制度とかビジネスとかもまさに「情報」にあわせるように動いているし。Googleだって、もとは検索エンジンから始まっているのに、いまは新聞記者みたいな人も沢山いてジャーナリズムとか言っている。まさに世の中が学環の時代になってきて、学環の重要性というのは確実にある。だから昔よりもっと学環は世の中に貢献しなきゃいけないし、そう期待されているし、それを果たさなきゃいけないと思っています。

一方で、もう少し自己批判的に言えば、学環はまだ十分には社会に貢献できていないんじゃないかな。しなきゃいけないっていう言い方もできるけど、もっとできるはずだって思っています。例えば、さっき僕の研究はスマートシティと言いましたが、スマートシティなんて本当に学際分野。スマートシティというと、すぐ欧州や米国がどうのっていう話が出る。日本なら地方都市をどうやって再生するかとか、東京の過密さをどうするかとかね。だけど、スマートシティをね、例えばアジアでやってみたらどうなるか。

この前話があったのは、ジャカルタ。ジャカルタはイスラム教だから、そこでスマートシティをやったら、何をどうやればいいっていうのが全然違うと思います。お祈りの場所が必要とか、断食で夜しか食べられなかったらレストランは遅くまで営業するのかとか、条件が違ってくる。スマートシティっていうのは、まちづくりだから、自ずと文化が関わってきます。文化研究なしにスマートシティはできません、でも、そういう知見は僕ら理系にはない。だから共同して取り組まなくちゃいけない。もちろんスマートシティだけではないけれど、学環の時代だからこそ、そういう連携を今後も広げたいと思いますね。

あと思うことは、だんだんと学環の卒業生が沢山外に出ているので、学環のなかだけで連携するだけでなく、もっと外と連携するっていうことが最近はできるようになってきています。国の審議会みたいなところで活躍している卒業生もいるし、学環発のベンチャーもある。20年の機会として、卒業して活躍している人たちとさらにネットワークを組むというのはいいと思いますね。

— 学府の学生に期待していることは?

チャレンジする気持ちかな、ごく一般的だけど。僕の好きな言葉に「一勝九敗」というのがあってね。どんなに大成功している人でも「一勝九敗」らしいんだよね。ということは、沢山いろんなことにチャレンジしないと、成功もしないってことなんだよ。それが僕みたいに年を重ねて、10勝90敗くらいになってくると、まあ今回は90敗目だなって諦めもつく。だけど、特に学生の頃って1試合目とか2試合目でしょ。3連敗したら、結構めげちゃうよね。でもね、ふつう9連敗くらいしちゃうんだよ。だから、3連敗でめげないでねって言いたいね。あと負けると自分の基準を下げちゃう人がいる、勝てるように。でも基準を下げないで、負けることにあまり怖がらないで。どんなに成功してても、9回はみんな負けてるから!そんなもんだからね。

企画:ウェブサイト&ニューズレター編集部
取材:鳥海希世子(特任助教)、鈴木麻記(特任研究員)
英文:デイビッド・ビュースト(特任専門員)


主担当教員Associated Faculty Members

教授

越塚 登
  • 総合分析情報学コース
  • 生物統計情報学コース

Professor

KOSHIZUKA, Noboru
  • Applied computer science course
  • Biostatistics and bioinformatics course