東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

April 13, 2018

教員インタビュー 松山裕 教授 (後編)Interview with Professor MATSUYAMA, Yutaka (Part2)

医療をめぐるデータサイエンスの専門家育成を目指して
松山裕(MATSUYAMA, Yutaka) 教授(後編)

2018年度、情報学環学際情報学府に生物統計の実務家を養成する「生物統計情報学コース」が新設されました。生物統計家の役割や臨床研究のデザイン、情報学環との結びつきなどについて伺いました。

In relation to the newly established Biostatistics and Bioinformatics Course, Prof. Matsuyama also shared with us the work of practitioners in biostatistics and his expectations for the new program in the III/GSII. Biostatistics practitioners collaborate with medical doctors to design methods for clinical trials. By first gaining the patients’ understanding, selecting methods to collect data, and designing the entire trial, these specialists work as coordinators. Through the new program, Prof. Matsuyama seeks to improve the quality of clinical research in Japan in addition to increasing the number of academic papers. He hopes the students will be active in developing efficient medicine with minimum side effects and optimum medical effectiveness. Finally, he also mentioned his hobby, which is playing golf. He said golf is interesting in that it is a rare game in which the winner is decided by scoring lowest. (Please also see the first half of the interview here)

(インタビュー前編はこちらからご覧ください)

ー 生物統計家のイメージを持っていない学生も多いので、まずはそれを伝えていかなくてはいけないですね。
そうですね。生物統計家というと広いので、理論家もいるわけです。でも今回の生物統計情報学コースに関しては、そういう方がメインではなくて、現場での実務家といいますが、生物統計家のなかでも実務を担当する人、実際にお医者さんと共同して研究を推進していく役目を担う人を対象としています。

ー 具体的には、どのようなことをするのですか?
例えば、新しい薬ができたので世の中で認めてくださいといっても、何のデータもなければ誰も認めてくれない。なので、患者さんに協力を得たもとで、ランダム化(無作為化)比較試験といいますが、介入研究を行います。どのように治療法をランダム化するかとか、そもそも何人患者さんを集めればいいかとか、それらのことを統計的に問題なく結論がいえるかどうかを予測して、事前に決めるわけです。そして、集めたデータをどう解析すればよいのかも考えます。

統計学って人数が多い方がいいっていうのは事実ですけど、患者さん相手ですから、少ない方がいいっていうのも事実です。だからそのせめぎ合いなんですね。少なすぎても統計的に何も言えないし、そこがちょっとまた特殊なところで。その調整役というか、簡単にいうとバッファかな…要するに、医療現場での研究をうまく、効率よくゴールまで辿り着かせるために間に入って働くのが、生物統計の実務家の役目だと私は思っています。

実をいうと、昔は製薬企業の人がお医者さんの仕事をサポートしてたんです。だからお医者さんはそれほどやらなくても、やってくれる人がいた。ただ癒着の問題が出てきたり、色んなことがあって、法律上、製薬企業はお医者さんのためにスライドつくったりとか、解析をしたりということが禁止になりました。その結果、病院でやる研究というものをどうやって動かしていけばいいのか、誰もわからなくなってしまった。今まで企業の生物統計の専門家がやっていたんですから。大学にはいない、だから作りましょう、ということなんです。

ー 情報学環でやってみたいこと、期待していることは?
このコースに関しては、いい学生が入ってくれて、病院、臨床研究をしているセンターや施設にしっかり就職してくれて、現場で3年間働けば一人前にはなれると思うので、5年間かけてそういう人を育てたいですね。

日本は医学の基礎研究では、論文の数だけですけど世界トップレベルです。でも残念ながら臨床研究、患者さんを扱った研究というのは世界で25位くらいなんです。論文の数だけですけど、やっぱり研究をすれば論文を出すという前提で我々はやっているので、やっていないということですね、あるいはやれない現状がある。そうした日本の臨床研究のレベルアップにつながっていければな、と。それがひいては将来の患者さんのために、同じ病気で苦しんでいる人が少なくなるように、というのが我々のゴールです。

我々は医者じゃないので患者さんは診られませんが、いい薬だったら、いい治療だったら、早くそれを世の中に出してあげたい。それも間違いが少ないように。ほんとうは効かなかったとか、あるいは副作用がものすごく強いものを出してしまうとか、そういうことがないように中立な立場でやっていく、というのが我々の仕事です。そういう学生を育てるというのが学環におけるやりたいことというか、使命ですね。

あと将来的にはですが、情報学環という大きな枠組みにいるんですから、もうちょっと大きな事に切り替えていく可能性はどんどん出てくると思っています。今は生物統計家に特化した話ですけど、例えば遺伝子データとか、カルテなどの大規模医療情報データというのは沢山あるんですが、どうやって解析すればいいか誰にも分からない。そういう人を育成していくとか。それは、広い意味でのデータサイエンティストということになります。

ー 趣味について教えてください。
ゴルフです。ゴルフって、スコアが少ない方が勝つという稀少なスポーツです。再現性と、いかにリスクを管理していくかが求められる。まじめにいうと、平均値を移動させて、どうSD(標準偏差)を小さくしていくか、というスポーツなんです(笑)。

 

企画:ニューズレター&ウェブサイト編集部・大庭幸治(准教授)
聞き手・文章構成:鳥海希世子(特任助教)
英文要約:潘夢斐(博士課程)
英文校正:デイビッド・ビュースト(特任専門員)


主担当教員Associated Faculty Members

教授

松山 裕

Professor

MATSUYAMA, Yutaka