東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

教授

山口 いつ子

Professor

YAMAGUCHI,Itsuko

  • アジア情報社会コース
  • 社会情報学コース

研究テーマ

  • 情報法・政策、表現の自由、プライバシー、知的財産
区分:
学環所属(基幹・流動職員)
所属:
情報学環
  • ITASIA program
  • Socio-information and communication studies course

Research Theme

  • Information Law and Policy, Freedom of Expression, Privacy, Intellectual Property
Position: 
III Faculty (Core & Mobile)
Department: 
Interfaculty Initiative in Information Studies
略歴

博士(社会情報学)

1968年生まれ。

1994年東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。

同年東京大学社会情報研究所助手、1998年助教授、2000年大学院情報学環助教授、2007年准教授、2012年教授。

1999年からハーバード大学ロー・スクール、2007年からオックスフォード大学知的財産研究センターにて各一年間の在外研究。2013年デューク大学スクール・オブ・ロー客員教授。

主要業績

1. 著書

・単著『情報法の構造―情報の自由・規制・保護』(東京大学出版会・2010年)〔第26回電気通信普及財団賞(テレコム社会科学賞)、第3回内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞〕。
・松井茂記・鈴木秀美・山口いつ子編『インターネット法』(有斐閣・2015年)〔単著「インターネットにおける表現の自由」同書25-52頁〕。

 

2. 論文

・単著「EU法における『忘れられる権利』と検索エンジン事業者の個人データ削除義務――グーグル・スペイン社事件EU司法裁判所2014年5月13日先決裁定を手掛かりにして」堀部政男編著『情報通信法制の論点分析』別冊NBL153号(2015年12月)181-196頁〔総務省情報通信政策研究所『情報通信法学研究会報告書』(2015年3月)63-77頁掲載原稿に補遺を追加〕。
・〔鼎談〕宍戸常寿・門口正人・山口いつ子「HOT issueインターネットにおける表現の自由とプライバシー――検索エンジンを中心として」ジュリスト1484号(2015年)ii-v頁、68-80頁。
・単著「グローバル情報環境における著作権と表現の自由とのバランス」小泉直樹・田村善之編著『はばたき―21世紀の知的財産法[中山信弘先生古稀記念論文集]』(弘文堂・2015年)609-626頁。
・単著「スマート・サーベイランス環境におけるプライヴァシー価値の正当化と組込み」アメリカ法[2012-1]号(2012年)59-62頁。
・単著「ネット時代の名誉毀損・プライバシー侵害と『事前抑制』――北方ジャーナル事件判決」論究ジュリスト1号(2012年)50-58頁。
・単著「マス・メディアの表現の自由と個人の表現の自由――ブロゴスフィア時代に求められる記者の『特権』論への視点」西原博史責任編集『岩波講座 憲法2 人権論の新展開』(岩波書店・2007年)141-168頁。

 

3. 判例評釈

・単著「取材フィルムの提出命令と取材の自由――博多駅事件」[最高裁昭和44年11月26日大法廷決定]長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選 I(第6版)』別冊ジュリスト217号(2013年)166-167頁。
・単著「政治家長女離婚報道によるプライバシー侵害と事前差止め―『週刊文春』販売差止仮処分命令申立事件保全抗告審決定」判例時報1906号222-229頁〔判例評論562号44-51頁〕(2005年)。
・単著「ニュース放送と名誉毀損――テレビ朝日ダイオキシン訴訟」[最高裁平成15年10月16日第一小法廷判決]堀部政男・長谷部恭男編『メディア判例百選』別冊ジュリスト179号(2005年)190-191頁。
・単著「マスコミ関係判例回顧」新聞研究622号(2003年)46-51頁、新聞研究633号(2004年)67-72頁、新聞研究645号(2005年)44-49頁、新聞研究655号(2006年)55-60頁。

学環の研究事業
  • 電通コミュニケーション・ダイナミクス寄付講座
Biography

Ph.D. in Socio-Information Studies (The University of Tokyo)

Born in 1968. Left the Doctoral Program of Graduate School of Sociology, The University of Tokyo in 1994 to be appointed as Research Associate, Institute of Socio-Information and Communication Studies, The University of Tokyo. Promoted to Associate Professor in 1998. Appointed as Associate Professor, Interfaculty Initiative in Information Studies, Graduate School of Interdisciplinary Information Studies, The University of Tokyo in 2000. Promoted to Professor in 2012.

Conducted visiting research at Harvard Law School for one year in 1999-2000, and at Oxford Intellectual Property Research Centre for another year in 2007-2008. Visiting Professor, Duke University School of Law, February-March 2013.

Achievements

Selected Bibliography:

1. Single-authored/Co-authored Book in Japanese

・ITSUKO YAMAGUCHI, JOHO-HO NO KOZO: JOHO NO JIYU, KISEI, HOGO [THE ARCHITECTURE OF INFORMATION LAW: FREEDOM, REGULATION, AND PROTECTION OF INFORMATION] (University of Tokyo Press, 2010).
・INTERNET LAW (Shigenori Matsui, Hidemi Suzuki, Itsuko Yamaguchi eds., 2015)(Itsuko Yamaguchi, Internet ni okeru Hyogen no Jiyu[Freedom of Expression on the Internet], at 25-52).

 

2. Journal Article in English

・Itsuko Yamaguchi, Protecting Privacy against Emerging “Smart” Big Data Surveillance: What can be Learned From Japanese Law?, PERCORSI COSTITUZIONALI, No.1, at 193-204 (2014).
・Itsuko Yamaguchi, Mass Media and Privacy in Japan: Current Issues, Recent Trends, and Future Challenges toward the “Ubiquitous Network Society”, JOURNAL OF KOREA INFORMATION LAW, Vol. 10, No. 1, at 171-81 (2006).
・Itsuko Yamaguchi (Translated by David C. Buist), Cyberlaw, THEORY, CULTURE & SOCIETY, Vol. 23, No. 2-3, at 529-31 (2006).
・Itsuko Yamaguchi, Beyond De Facto Freedom: Digital Transformation of Free Speech Theory in Japan, 38 STANFORD JOURNAL OF INTERNATIONAL LAW 109-22 (2002).

 

3. Journal Article/Book Chapter in Japanese

・Itsuko Yamaguchi, EU Ho ni okeru “Wasurerareru Kenri” to Kensaku Engine Jigyosha no Kojin Data Sakujyo Gimu (CJEU, Preliminary Ruling in Google Spain SL Case, May 13, 2014) [“Right to be Forgotten” in EU Law and Search Engine Operators’ Obligation to Delete Personal Data], in JOHOTSUSHIN HOSEI NO RONTEN BUNSEKI, Special Issue of NBL, No. 153, at 181-96 (Masao Horibe ed., 2015).
・Itsuko Yamaguchi, Global Joho Kankyo ni okeru Chosakuken to Hyogen no Jiyu tono Balance [A Balance between Copyrights and Freedom of Expression in Global Information Environments], HABATAKI: 21 SEIKI NO CHITEKI ZAISAN HO 609-26 (Naoki Koizumi & Yoshiyuki Tamura eds., 2015)
・Itsuko Yamaguchi, Smart Surveillance Kankyo ni okeru Privacy Kachi no Seitouka to Kumikomi [Justifying and Embedding Privacy Values in Smart Surveillance Environments], AMERICA-HO, No. 2012-1, at 59-62 (2012).
・Itsuko Yamaguchi, Net Jidai no Meiyo Kison, Privacy Shingai to “Jizen Yokusei”: Hoppo Journal Jiken Hanketsu [Defamation, Privacy Invasion, and “Prior Restraint” in the Age of the Net : Hoppo Journal Case Judgment], 1 QUARTERY JURIST 50-58 (2012).

 

4. Case Review in Japanese

・Itsuko Yamaguchi, Shuzai-film no Teishutsu Meirei to Shuzai no Jiyu: Hakata-eki Jiken [Subpoena on TV Films and Freedom of Newsgathering: The Hakata Station Case] (Supreme Court decision, Nov. 26, 1969), in KENPO HANREI HYAKUSEN, Vol. 1 [Special Issue of JURISUTO, No. 217], at 166-67 (Yasuo Hasebe et al. eds., 6th ed. 2013).
・Itsuko Yamaguchi, Seijika-chojo Rikon-hodo niyoru Privacy-shingai to Jizen-sashitome [Privacy Invasion by News Reporting on the Divorce of the Statesperson’s Daughter and Preliminary Injunction](Tokyo High Court decision, Mar. 31, 2004), 1906 HANREI JIHO 222-29 [562 HANREI HYORON 44-51] (2005).
・Itsuko Yamaguchi, News Hoso to Meiyo Kison [News Broadcasting and Defamation], (Supreme Court judgment, Oct. 26, 2003), in MEDIA HANREI HYAKUSEN [Special Issue of JURISUTO, No. 179], at 190-91 (Masao Horibe & Yasuo Hasebe eds., 2005).
・Itsuko Yamaguchi, Mascomi-kankei Hanrei Kaiko [Annual Review of Cases on Mass Communications], 622 SHINBUN KENKYU 46-51 (2003); 633 SHINBUN KENKYU 67-72 (2004); 645 SHINBUN KENKYU 44-49 (2005); 655 SHINBUN KENKYU 55-60 (2006).

 

Current Project with the Research Grant

Principal investigator: Itsuko Yamaguchi
Project title: Joho Kankyo no Smart-ka no moto deno Joho Ho no Riron Taikei to Kachi Chousei ni kansuru Nichibeiou Hikaku Seido Kenkyu [Comparative Study of Legal Systems relating to Theoretical Schemes and Balancing of Values in Smart Information Environments in Japan, the United States, and Europe]
Name of the grant: KAKENHI Kiban (C) [JSPS, Grant-in-Aid for Scientific Research (C)]
Term: from April 2013 to March 2017


情報法・政策とは?

「情報法」や「情報政策」というのは、日本では、1960年代以降に進展した社会の情報化に伴う先端的課題に対応するために発展してきた、新しい学 問分野です。とりわけ、近年、インターネットやユビキタス・ネットワーク等の情報通信技術の急激な発達によって次々と生じる課題に対応するには、伝統的な 法カテゴリーの枠を越えて、より領域横断的かつ体系的なアプローチの下で、解決策を探っていくことが求められています。これらの課題に対して、日本でも 1990年代末頃から、個別領域においては、制度的措置が積極的に講じられてきました。ただ、情報にかかわる様々な制度を互いに結び付けて中長期的に方向 付けていく、この情報法・政策分野の「共通の要素」とは何かが、見え難くなっている状況にあるといえます。そこで、こうした問題意識に基づき、情報をめぐ る法的・政策的課題の解決において考慮されるべき基本的な価値原理、そして、拮抗する諸価値間の微妙な調整を図るための概念と論理技術を探求すべく、研究 を進めています。詳細については、『情報法の構造―情報の自由・規制・保護』(東京大学出版会・2010年)をご覧いただければ幸いです(http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-036141-5.html)。

 

近年の研究テーマ

より具体的に、近年における私の研究テーマを、情報の「自由」、「規制」及び「保護」というキーワードでまとめておきます。

第一に、情報の自由の理論的基礎として、表現の自由を憲法で保障することのそもそもの意義や根拠を問いかける原理論に注目し、この自由が複数の価値の組み合わせによって支えられているという価値構造や、自由の限界を根拠付ける論理について、考察を行っています。

第二に、こうした従来の法における表現活動ないし情報流通の「自由」と「規制」のバランスが、今日、新たな情報通信技術の発達の下で問い直されてい る状況を、マス・メディアの報道・取材の自由、通信と放送の融合化、プライバシー・個人情報保護、著作権などの個別の争点を取り上げながら、検討していま す。

第三に、財産としての情報の保護のあり方をめぐって、とりわけ、「知的財産権」と「自由な情報流通」とが衝突する場面に着目し、そこでの両者の調整――つまりは、情報の「保護」と「自由」との調整―― における均衡に向けての課題に取り組んでいます。

学生の皆さんへ

法や政策をめぐる課題には、複数の重要な価値の間の対立が含まれることも多いので、その解決策として、常に唯一の正解があるとは限りません。解決に 向けた複数の選択肢を見つけ出し、そこからよりよいと考えられるものを選び、その選択の理由を組み立てていく、というプロセスがとても大事です。なかで も、私がアメリカとイギリスにおけるそれぞれ一年間の在外研究で感じたのは、法学には、the art of persuasion、つまり「説得の技」という一面があることです。相手を説得する論理の組み立て方の訓練は、学生の皆さんがこれからの厳しいグローバ ル競争の時代を生き抜いていく上で、きっと役に立つと思います。そのための一助になるかもしれないと、英語での授業も行っています。

情報法・政策に関する課題はきわめて多彩かつ広範ですが、文理にわたる専門分野の研究者が集う学環・学府は、こうしたチャレンジングな課題に立ち向 かう知的刺激と楽しさにあふれています。今なお成長期にあるこの情報法・政策に、一緒に取り組んでいこうという意欲のある学生をお待ちしています。