東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

教授

小出 大介

Professor

KOIDE, Daisuke

  • 生物統計情報学コース

研究テーマ

  • 薬剤疫学(特にベネフィット・リスク評価)と診療情報解析
区分:
学内兼担・授業担当教員
  • Biostatistics and bioinformatics course

Research Theme

  • Pharnacoepidemiology (Benefit/Risk Assessment) and Clinical Information Analysis
Position: 
Affiliated Faculty
略歴

1991年東京理科大学薬学部薬学科卒業,薬剤師の資格を得て,1996年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了,博士(保健学)取得.1996年東京大学医学部薬剤疫学講座助手,1997年Harvard Medical Schoolフェロー, 1999年東京大学医学部附属病院中央医療情報部文部教官助手,2001年国際医療福祉大学助教授,2003年東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット特任助教授,2007年東京大学大学院医学系研究科臨床疫学研究システム学講座客員准教授、2008年同特任准教授を経て,現在,東京大学大学院医学系研究科 生物統計情報学講座 特任教授.

Biography

Daisuke Koide is a project professor at the Department of Biostatistics and Bioinformatics, Graduate School of Medicine, at the University of Tokyo. His areas of specialty are pharmacoepidemiology, clinical Information Analysis, and medical informatics. He graduated from Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tokyo University of Science in 1991. After he received PhD from Graduate School of Medicine at the University of Tokyo in 1996, he served as an instructor at the dept. Pharmacoepidemiology, the University of Tokyo in 1996, a fellow at Harvard Medical School in 1997, an instructor at the hospital computer center at the University of Tokyo Hospital in 1999, an associate professor at the International University of Health and Welfare 2001, a project associate professor at the clinical bioinformatics research unit, at the University of Tokyo in 2003, an visiting associate professor at the dept. clinical epidemiology and systems, at the University of Tokyo in 2007 and a project associate professor in 2008.


薬には有効性のみならず多かれ少なかれ副作用があります。そのため有効性とリスクのバランスを考えながら、有効性は最大限に引き出し、逆に副作用は最小限に抑えたり予防するために、薬の適正使用が求められます。ただし薬が開発される臨床試験では、限られた期間、症例数などの関係で十分な安全性を把握したり、評価することができないため、製造販売後も特に安全性に関して追跡して調査することが必要となります。その手法の1つが薬剤疫学です。また近年情報技術が発達し、医療分野でも病院情報システムや電子カルテが普及し、それらが日々刻々と蓄積され大規模データベースとなって保存されています。このようなリアルワールドの大規模データベースを解析することで、これまで未知であった有効性の可能性や副作用を見出すこともできたりします。

薬剤疫学

薬剤疫学は比較的新しい学問です。世界的に著名な薬剤疫学の教科書の編者であるStrom教授は、薬剤疫学を「人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問」と定義しています。人の集団における薬物の使用については、近年の病院情報システムや電子カルテの普及により、比較的容易にかつ迅速にデータを収集できるようになってきました。そしてその効果や影響を研究する上で、有効性やリスクは勿論、コストに関しても対象に研究がされます。しかし大多数の集団で初めて明らかにされる事項としては薬の製造販売後における副作用など安全性に関することが多い状況です。また安全性に関する事項では、評価のしやすい理想環境下の臨床試験ではわからないことも多く、そのためリアルワールドデータが現在、注目されてきています。このようなリアルワールドデータを用いて薬のベネフィットとリスクをそれらのバランスとの兼ね合いも考慮して評価する研究をしています。

診療情報解析

「診療データ」と「診療情報」は似たものとしてあまり区別をされないかもしれませんが、例えば「空腹時血糖が150mg/dl」というのは単に診療データですが、医学知識がある者にとっては高血糖であることがわかります。このようにデータは単に数値や記号や名称のみですが、情報になると価値や意味が含まれてきます。従ってここでは単なる診療データ解析ではなく、価値や意味のある解析として診療情報解析としました。またこの診療情報解析を踏まえて、新たな意思決定に反映させることなどは重要であり、医療機能の評価などもできるようになります。先述のように医療分野においても情報技術の進歩により、病院情報システムや電子カルテが普及し、そこから得られる診療情報を解析して意思決定に繋げるような研究もしています。

医療情報学

医療情報学とは「診療・医学研究・医学教育・医療行政など医学のすべての分野で扱われるデータ・情報・知識をその医学領域の目的に最も効果的に利用する方法を研究する科学」と日本の医療情報学のパイオニアである開原成允は1980年に定義をしています。この定義は今日でも通用するものではありますが、近年、バイオインフォマティクスなどゲノム領域の進展や、さらにバーチャルリアリティやAIなど新たな技術の導入もなされるようになっており、医療情報学の取り扱う領域は大きな広がりをみせています。そのような新たな広がりをみせる医療情報学について、情報学環・学際情報学府の人々とともにさらに研究していきたいと考えています。