東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III/GSII

研究Research

February 6, 2026

【教員インタビュー】暦本 純一教授 (後編)Faculty Interview: Professor Junichi Rekimoto (Part3)

総合分析情報学コースにて、実世界指向インタフェースのご研究をする暦本純一先生のインタビューです。暦本先生は2025年度3月にご退官をご予定されています。(暦本先生最終講義について)

本インタビュー記事は、前編と中編、後編に分けて掲載します。前編では研究テーマとそれに至った背景について伺いました。中編では、暦本ゼミでの学生の研究の研究活動についてのお話を伺いました。後編では、暦本先生が人として大切にされている視点・アプローチと学府・学生へのメッセージを伺いました。

Professor Junichi Rekimoto, who teaches in the Applied Computer Sciences Course, plans to retire at the end of the current academic year, in March 2026. (Link: Prof. Jun Rekimoto Last Lecture)
In the three parts of this interview, he 
talked about his current research topics, the activities of students in his laboratory, and his message for students respectively.

日本語は抄訳に続く(Japanese interview text follows English summary)

 

Part 3

After retiring from the III, Prof. Rekimoto plans to continue his work from his new base in Kyoto. He finds Kyoto, with its unique combination of tradition and modernity, to be an ideal location for his activities. As humans, we need to maintain ties with the unchanging even while pursuing innovation. Technological efficiency must be tempered by the human imagination. This is why Prof. Rekimoto maintains a strong interest in literature, especially science fiction. Science fiction provides an imaginative spark that may motivate people to pursue science, even if attempts to make science fiction into reality are almost bound to fail. The point is to find the trigger that unleashes human creativity. Students learn best when they are allowed the freedom and means to pursue their ideas. Rather than giving precise guidance to students, Prof. Rekimoto seeks to give sufficient leeway for such autonomous growth. He also makes sure to provide the necessary equipment, so that students are not limited by the means available.

Prof. Rekimoto believes that the III will play an increasingly important role preparing people for roles in the society of the future. With the growing impact of AI and robotics, there will be a greater need for those with both technological and social understanding. As existing disciplinary boundaries become increasingly irrelevant to the demands of the times, the III’s interdisciplinary approach will gain ever greater relevance.

 

―来年の3月に先生はご退官の予定であると伺っております。

活動の中心は研究機関がある京都になると思います。京都という場所は千年も前の事を今でも続けてやっています。それでいて実は新しいことを取り入れている街 でもあります。伝統もあって新しいものもあるという生態系が自然に存在する環境の中でAlをはじめとする新しい分野の研究をするのは、東京とはまた違ったものになるのではないかと期待しています。

人間だから変わるものと変わらないものってあります。両方とも大事なわけですね。AIとか先端技術を追いかけていると、なんかこう非常に貧しい感じ。例えばスマートシティであってもお茶室とか、路地裏に居心地のよいカフェがあるみたいな。吉見先生もそんな感じですね。路地裏のカフェが都市の本質ではないか。そういう世界っていうのは、テクノロジーが変わっても、人間としてこう一番大事に思っているだろう、そういう観点を忘れたくないなと思って、それを発信するとなると、京都は非常に強力なブランドでもあると思っています。

 

―合理性とか省略化を求めつつ、その中でやっぱり人がいいっていうポイントっていうものを教えていただければなと。

小説を読むのは今でも好きで、SFはもうめちゃめちゃ好きで、最近もSFマガジンに解説を書きました。研究の参考としてSFをよむというよりも、そもそもSF的なことをしたいから研究者になったと思っています。

ライトペンと同じで、SFの方にまず魅了されてSF的なことをしたいというのを、理系的アプローチから研究しているというところはあります。文学作品とか想像力みたいなのは大好きです。人間中心というよりも、どっちかというと空想の世界ですよね。サイエンスとしてちゃんと突き詰められる前の、最初の一番ふわふわ考えるところ、SF的な空想や妄想の世界が好きで、そういうことを考える人間のイマジネーションが好きです。

ただ、妄想から実際の研究になる打率は百分の一ぐらいとだと思います。逆にそのぐらいアホなことを考えてます。

 

―人のセンスが開花するスイッチについて、これまで多くの、スイッチを押してこられたんだなと考えます。先生がどういうふうに、クリエイティビティのスイッチを押したのか伺いたいです。

基本的にものづくり系の研究室なので、自分でハードウェアを作り、論文を書き、学会で発表するまでを一気通貫でやると、かなり力がつくと思いますね。あるいは自分がここまでできるんだという自信もつきます。

当然失敗とかもありますが、私はあんまりそう細かくは言わないで頑張ってみて、という感じですが、結構、自分が作ったものがこれですと言え、人に見せてコメントもらったりするという、その一連のプロジェクトを完遂する作業そのもので、本人が非常に育っていると思います。作業量は多いかもしれないですけど、そういう一連の作業をちゃんと最後まで完遂する。よく、山を登り切るっていますけど、山の高さよりも、最初この山を登って山頂から見て、ちゃんと無事に下山して戻ってくるみたいなところまでやると、非常に力がついて、今度は次のもっと高い山っていうに言えると思うんですね。

一応、研究予算の心配は学生がしなくていいぐらいように、研究室が貧乏で機材買えないから、この人のすごいアイディアを潰すということがないぐらいは頑張って研究資金を集めてきてるので、経験を積むということについての支援は、わりとできるかなと思ってます。

今、下の実験室にヒューマノイドがいます。研究室の最後の大型予算でヒューマノイドを買いました。これで研究をする学生もいますし、なんかここにしかない機械があったりすると、みんな盛り上がります。

 

―これからの学環がこの世の中で果たすべき役割についてお言葉いただけますか。

それは非常に大きいと思っています。AIにしても、AI倫理など社会とのつながりは重要です。著作権の話もありますし、AIが人間の仕事を代替できるようになると、人間のほうの就業体系とか会社組織とかは当然変わっていくでしょうが、どうなるか、あるいはどうすればいいのか。そういった学際的な研究課題は多くありますし、AI時代の防衛とかもあるかもしれないし、安全保障など多くのことが関係します。

社会のあらゆるところにAIやロボットが来るとすると、技術的・工学的な話も含めて総合的に社会的な影響を考えるということが非常に大事です。その時に技術の可能性を全然分かってない人が、ただこう規制しろって言うのではなく、学環のような技術的・工学的なことをわかりつつ学際的なマインドを持った人が考えていかないと、社会制度とか制度設計はできないと思います。未来の社会システムを構築できる、学環はそういう人材を育てるところだと思います。

今日の学問の教科や領域というのは、あくまで「たまたま今」決まっているに過ぎず、今後どんどん変化するものですよね。社会システムや社会制度のあり方は、テクノロジーをどのように社会にデプロイ(実装)していくかという問題と密接に関係していて、こういうことを考えるためには、工学系、人文系そぞれだけでは到底収まりません。

これからの社会を作るということは、局所的な勉強だけではなく、こういうことやってる人がいたし、こういうことあの人やってたねみたいな、学際的なマインドっていうのは、その学問の教科を踏み越えるみたいなことは、とても大事だと。

 

―最後にこのインタビュー記事を、たまたま手にした小中高校生に向けてなにかアドバイスをいただけますか?

好きなことがあれば、どんどん突き進んだ方が良い。いま学ぶってことはもちろん大学でもできますが、Alが教えてくれる時代なので、もう始めてしまった方がいいと思います。 大学に入ってから、ではなく、もうすでに例えばロボットを作り出そうとか。そういうことは趣味でもいいので、やった方がいいです。

 

暦本先生の最終講義は2026年2月28日(土) に開催されます。
詳細はこちらをご確認ください。

 

企画:学環ウェブ&ニューズレター編集部
取材:開沼博(准教授)・畑田裕二(助教)・山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)・柳志旼(博士課程・編集部)・松川隆史(教育部・編集部)
構成:山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)
英語抄訳:デービッド・ビュースト(特任専門員)

(取材日:2025年7月24日)