January 23, 2026
【教員インタビュー】暦本 純一教授 (前編)Faculty Interview: Professor Junichi Rekimoto (Part1)
総合分析情報学コースにて、実世界指向インタフェースのご研究をする暦本純一先生のインタビューです。暦本先生は2025年度3月にご退官をご予定されています。
本インタビュー記事は、前編と中編、後編に分けて掲載します。前編では研究テーマとそれに至った背景について伺いました。中編では、暦本ゼミでの学生の研究の研究活動についてのお話を伺いました。後編では、暦本先生が人として大切にされている視点・アプローチと学府・学生へのメッセージを伺いました。
Professor Junichi Rekimoto, who teaches in the Applied Computer Sciences Course, plans to retire at the end of the current academic year, in March 2026. In the three parts of this interview, he talked about his current research topics, the activities of students in his laboratory, and his message for students respectively.
日本語は抄訳に続く(Japanese interview text follows English summary)
Part 1
Prof. Rekimoto’s interest in human-computer interfaces goes back as far as his undergraduate years at the Tokyo Institute of Technology, where he conducted research on early mouse-driven graphical user interfaces, which were just being introduced in the 1980’s. After graduation, he worked in the research departments of NEC and Sony before coming to the University of Tokyo.
His focus has since shifted to multi-touch interfaces, which make use of all the human fingers, unlike mouse interfaces that use only a single point. Rather than simply pursuing improvements to existing devices like the mouse, he has sought to think backwards from human anatomy to exploring new more convenient ways humans can interact with computers. The aim is to first
develop a vision and then find the technological means to realize it. This has necessitated the acquisition of knowledge about diverse technologies, such as capacitance sensors, electronic chips and operational amplifiers. Prof. Rekimoto expects his students to adopt a similar exploratory approach in their own research.
―先生の現在に至るまでの経歴についてお聞かせください。
大学の学部は、東京工業大学(現東京科学大学)の理学部で、修士課程までそこの情報科学科に在籍しました。コンピュータサイエンスが専門です。当時から、いわゆるヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)という、コンピュータなどの機械と人間との関係について研究していました。1980年代なので、UNIXやSunワークステーションなどが、ちょうど日本に初めて入ってくる時代でした。初めてマウスとか、そういうのが出てきたぐらいの時代だったので、当時としては、グラフィカル・ユーザ・インターフエースから研究を始めたというのが発端です。その後NECの研究所に入りました。そこに8年ぐらいいて、ソニーコンピュータサイエンス研究所に移り、さらに約10年後に、現職という経歴になります。
―そもそもその分野に入ろうとしたきっかけがあったのですか?
そのきっかけはとても古くて、1970年の大阪万博がきっかけになります。私は小学4年生だったのですけど、はっきり覚えているのは、アイ・ビー・エム館というパビリオンがありまして、そこでライトペンが展示されていて、ライトペンで画面をタッチするという、当時最先端の技術を子どもに体験させてくれたんです。私の大学時代でも珍しいぐらいで、1970年においては非常に珍しいものでした。コンピュータ画面上の漫画の絵にペンをあてると画面がピッと変わる。それに子どもの私は、非常に衝撃を受けたわけです。コンピュータというものを初めて目の前にして、しかもペンで触ったら漫画の画面が変わるという仕組みに、大きな衝撃を受けて、その時に「こういうのをやりたい!こういう仕事をやりたい!」と思いました。こういう仕事って具体的にどういう仕事なのかなんて、全然分からないながら、とりあえずコンピュータに触る仕事をしたいと強く思いました。それがきっかけです。その後、自宅に戻ってから、コンピュータにはどうもプログラミングというのがあるらしいということを突き止めます。まだ社会にコンピュータというものが入り込んでいない時代でしたが、NHKでコンピュータ講座という白黒の番組があるのを見つけて、大人用の教科書を取り寄せるなどしていました。つまり小学4年生ぐらいで勝手にプログラミングの勉強を始めたので、英語を学ぶよりも先にプログラム言語のフォートランを学び始めることになりました。フォートランに使われている言語は当然全部英語です。なので、outputとかformatとか、そういう単語をプログラミングの中で初めに覚え、のちに中学校になって、英語の授業でまた出会うという感じでした。そんなプログラム言語の習得も身近に実機のない環境での学習ですから、教科書で学んでは方眼紙にプログラムを書いてみるといったかたちでした。
―その後、先生が取り組んでこられた研究についてお聞かせください。
一言でいうなら、人間とコンピュータの関係を良くすることを目指しています。おそらく一番わかりやすいのは、後にスマートフォンなどで使われているようなマルチタッチです。その原理研究などを、2000年ぐらいにしていました。ユーザー・インターフェースについては他にも様々な取り組みをしてきましたが、それが一番皆さんに使っていただけていると思います。静電容量センシングという技術の回路などを様々、設計したり論文を出したりしていました。それが多くのメーカーなどに採用され、マルチタッチ全盛の時代を迎えるに至るひとつの基礎研究になりました。人間には指がたくさんあるので、自然に考えるとマルチなタッチが当たり前で、マウスのような1点だけの入力機能はむしろ不自然であるという考え方です。当時マウスというのが、それまでのタイプライター的コマンド入力よりも明らかに良いので、当時はみんなマウスの研究としてマウスにちょっとホイールをつけるぐらいのことをしていました。でもさらに原点に立ち返って、つまり、人間は指をたくさん持っているのだから、マルチなタッチは当たり前なのではないかと。それを実現するにはどうしたらいいかというふうに逆算して考えました。学生にも常に言っているのは、普通、素直に考えると不自然だったり、不便だったりするものはいくらでもあるのに、それが技術だから仕方がないと思い込んでしまうと、その思考から外れられません。でもそこから外れることがアイディアにつながると思っています。もちろん新たな技術を具現化するには困難も伴います。具体的に言うと、マルチタッチであれば静電容量を扱うわけなので、電子チップ、オペアンプなどの増幅回路、あるいは静電界の性質とか、いろんな技術の知識が必要なわけですが、それはどんどん勉強しなくちゃいけない。私は別に、静電界の専門家じゃありませんが、むしろやりたい事から逆算してその勉強をしました。やりたい事があった時に必要だけど知らないことって当然あるはずなので、それは勉強するしかありません。だから、学生に求めるのは、コンピュータビジョンの研究室だから、その先にあるものをちょっとだけ考えるというよりも、今ある世の中で問題があったらそれを自分としてどう解決したいか、技術的にどういうふうに繋げて解決するかというところを研究するのに必要なことをそこでまた勉強するというスタンスです。
企画:学環ウェブ&ニューズレター編集部
取材:開沼博(准教授)・畑田裕二(助教)・山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)・柳志旼(博士課程・編集部)・松川隆史(教育部・編集部)
構成:山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)
英語抄訳:デービッド・ビュースト(特任専門員)
(取材日:2025年7月24日)
