東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III/GSII

研究Research

January 30, 2026

【教員インタビュー】暦本 純一教授 (中編)Faculty Interview: Professor Junichi Rekimoto (Part2)

総合分析情報学コースにて、実世界指向インタフェースのご研究をする暦本純一先生のインタビューです。暦本先生は2025年度3月にご退官をご予定されています。

本インタビュー記事は、前編と中編、後編に分けて掲載します。前編では研究テーマとそれに至った背景について伺いました。中編では、暦本ゼミでの学生の研究の研究活動についてのお話を伺いました。後編では、暦本先生が人として大切にされている視点・アプローチと学府・学生へのメッセージを伺いました。

 

Professor Junichi Rekimoto, who teaches in the Applied Computer Sciences Course, plans to retire at the end of the current academic year, in March 2026. In the three parts of this interview, he talked about his current research topics, the activities of students in his laboratory, and his message for students respectively.

日本語は抄訳に続く(Japanese interview text follows English summary)

 

Part 2

The most important quality that Prof. Rekimoto looks for in prospective students is a strong sense of interest and desire to keep studying in pursuit of a vision. Especially in an age when technology is changing fast, this quality is far more important than any specific educational background in the natural sciences. Current developments in AI, for example, require constant learning. In fact, few students end up doing what they said they wanted to do in their admission interviews. For example, one student had worked as a swimming coach and ended up developing an underwater robot that monitors swimmers form from below and displays the result to the coach poolside. To achieve an effective result, multiple technical problems had to be solved that could not have been predicted at the outset of the project. This required considerable effort and persistence from the student concerned. Such willingness to persevere in pursuit of a goal is what is needed of a student above all.

 

In the age of information abundance, those with clear goals can easily access the information they need to achieve what they want to do. On the other hand, the overabundance of information can make it difficult to decide what to do in the first place. It does not take much searching to discover that someone else is already doing what one had planned to do. In the past, people worked in their own silos and only become aware of others doing similar projects at a later stage (at academic conferences, far example). However, now that almost everyone’s work is immediately visible to each other, achieving originality can be difficult. Overlapping of research topics is inevitable to some degree and not a bad thing in itself. Indeed, more people working on the same problem is evidence of the importance of that problem.

 

―学生さんがそういった形で取り組んだ具体的な事例はありますか。

水泳が得意で水泳コーチのアルバイトをしている学生が研究室にいました。その学生が取り組んだのが水中を泳ぐコーチングロボットの開発でした。泳ぐ人間の下側を一緒に進んで撮影し、プールサイドにいるコーチが同時にディスプレイでフォームを確認するという、そんなロボットを開発するわけです。水中で活動できるロボットをどう作るか、どうやって安定的な動きをさせるか、人間を認識して上手く撮影するカメラをどうするか…と様々な課題をクリアしていかなければなりません。そういう一式の勉強を経て、最終的に人間にとって役立つシステムにまとめ上げたという、そんな事例がありました。

 

―ゼミに入るためのリテラシーとしては、いわゆる理科系の基礎は必須ですか。

学環の入試で別に所属学部が文系だからとか理系だからってことは特になくて、どっちかっていうと、個人個人でめちゃめちゃ、例えばギークな子がいて、自分で買ってロボットを作るみたいな。結局は勉強云々というよりは個人の興味関心が強く、それをどんどん実践するタイプなのか、勉強として考えてるかっていうところがあります。特にAIなんて誰も知らないわけですね。大学に入った瞬間のAIと2年後のAIも全然違うんで、それはもう常に勉強し続けないとならないわけです。たまたま理系だからっていう話ではないので、自分で学ぶっていうスタンスがあれば大丈夫だと思います。

入試の時にやりたいとか、面接の時にやりたいったことをそのままやる学生は実はあんまりなくて、来て最初にどうしましょうかと話してる時に、趣味とかを聞いて、「実は水泳コーチやってます」「えぇ?!」みたいな話から始まったりします。基本的にはいろんなことを聞いたり、こっちからちょっとネタ振ったりしながらやります。

ただ、学生さんもいろいろなので、どのくらい頑張れるかみたいなことはあります。さっき(前編:水中ロボット)みたいなロボット作るって、非常に努力が必要です。水中ロボットって実は熱暴走するんですね。水中は閉じた世界で、実際にやってみないと全然分からなくて。結構空中の方が実はドローンとか熱暴走しなくて、水中だと水で閉鎖されているので、中の温度などを考えるとかいろいろ起きるんですよ。いろいろ起きるってことはすごい勉強にもなるし、研究的に大事なんだけど、まあ山越え谷超え、やる気があるかどうかが大切です。

 

―企業の中でそういう商品開発、製品開発するのと、大学でそういうプロジェクトであるとのこと、大きな違いはありますか。

最初はあまり変わらないかもしれないですね。要するに0から1のところは、さっき言ったなんで指は複数本あるのにマウスは1点しか扱わないのか、みたいなのは特別に企業でも大学でも全然関係なくできると思います。研究の肝は0から1のところなので、0から1を生み出すところが大学として一番大事なところ。1を10にしたり、100にしたりっていうのは多分スタートアップ企業とか、他の大学でも企業とコラボレーションするみたいになるので、そこから先になるといろいろ、製品化する時の話はまた全然違ったりとか、その量産できるかとか品質保証とかいう話あるんですけど、多分、学生さんが全部そこまで考えられるってことは期待しないので、まずはこの、夢みたいな話、水泳を教えるロボットを作りたいみたいな話なんだけど、でもどこかで現実になる最初の一歩ができればいいかなと思ってます。

 

―技術スピードとか大きく変わっていますが、今の学生が恵まれていると思うことと、今だからこそ大変だなと思うことはありますか。

私の学生時代はWebの出現前だったので、全然情報はないわけですよね。コンピューターを勉強しようと思っても、研究室で紙の論文誌があったり、図書館に行って文献調べてコピーするみたいな感じでした。知識を得たり研究分野が何をやってるかって把握するだけでもかなり大変だったんですけど、今だと色々な情報をネットで得られるので、何かやりたいってことがはっきりしてる人にとっては、とても恵まれていると思う。

一方、情報が多すぎるので、何やろうかって考えると、どこに行ってもすでにやっている人がいるような気がしてしまうということはあると思います。昔は、実はすでにやっている人がいても、たまたま知らないことがあって、論文を発表した時にかち合うってざらにあったんですね。学会会場であなたと私は同じことやっているじゃないですかみたいな話は、実は学生でなくても教授も平気でやっていて、そんなのんきな時代だったのです。

昔の方があんまり世界のことも分からず、勝手に研究できたかもしれないけど、今だと全部見え過ぎちゃってるっていうところは、本人の独創性みたいなことは、「あ、これもある」と思っちゃうと大変かもしれない。学生さんの場合、かぶってもいいし、やっちゃっていいと思います。たまたま同じことやっている人がいたら、それは価値のある課題なので逆に嬉しいと言った方がいい。

 

―在学中の横のつながり、ちょっとあの先生に聞きに行ってみようかなということが理想だと思うのですが、暦本先生はどのようなお考えをお持ちですか。

そこが多分課題で、学際と言うからには、本当はもっとコースを跨ってとかあればいいんですけど、結構大変で。知らない先生のところ行ってみたらといっても、なかなか研究室に行くとか敷居が高いですよね。なので、例えば、フォーラム、シンポジウムとかそういう場所が増えてくれれば、ディスカッションする場がもうちょっと増えると思います。授業でもあるにはあるんですけど、要するに入っちゃうと「○○研、以上。」、研究室外の隣の研究室の内容も知らないみたいになりがちです。

分野横断の話題、例えばロボットが社会に入った時、どうすべきかというのは、当然、そのいろんな人が意見を持ったりします。「技術的にはここまでできるけれども、社会システムでは何が言えますか?」とかいう感覚もあったりなので、いろんな人の知恵を持ちよるような、もう少しオープンに議論したり、フォーラムとかシンポジウムみたいなものはもう少しあってもいいかもしれないです。

毎週金曜日は研究室回り持ちでどこかがホストして、みんな集めて、ちょっとサンドイッチ出すぐらいな。食べ物で釣ればわりと効果的かもですね。昼間やるシンポジウムって誰も来ないけど、「なんか今日は○○研がなんかちょっと美味しいの出していて、誰でも来ていいんだよ」って言うと、それ目当てでもいいから来たらなんか喋るでしょう、みたいな。

 

 

企画:学環ウェブ&ニューズレター編集部
取材:開沼博(准教授)・畑田裕二(助教)・山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)・柳志旼(博士課程・編集部)・松川隆史(教育部・編集部)
構成:山内隆治(学術専門員)・原田真喜子(特任准教授)
英語抄訳:デービッド・ビュースト(特任専門員)

(取材日:2025年7月24日)