東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

September 22, 2017

教員インタビュー 池亀彩 & 額定其労 准教授 (後編)Interview with Associate Professor Ikegame, Aya & Khohchahar, Chuluu E. (Part2)

国境を越えて、豊かな人文知の視点で社会を見る
池亀 彩(IKEGAME, Aya)准教授 ✖︎ 額定其労(KHOHCHAHAR, Chuluu E.)准教授 対談 (後編)

国境やディシプリンの隔たりは関係なく、地球や学問の世界は繋がっています。
国際経験の豊富な額定其労先生と池亀彩先生へ、研究者への道や方法論、学環への期待などについて伺いました。

In the second half of the interview, Associate Professors Khohchahar and Ikegame discuss research methodology and the potential of interdisciplinary approaches. The breadth of social anthropology can provide an antidote to the relatively narrow focus of other disciplines and bring light to marginalized topics. Khohchahar is also interested in socio-legal/legal-anthropological studies as he sees this as valuable in providing a more contextual understanding of law. Ikegame draws attention to the interdisciplinarity of regional studies and the common ground shared by all those studying South Asia regardless of discipline. The interviewees also talk about their hobbies. Khohchahar likes to watch documentaries on YouTube, while Ikegame enjoys such activities as knitting, watching kabuki, wearing kimono, calligraphy, and photography. In regards to their hopes for the future of the GSII and III, they agree on the need to expand the publication of academic works in English to reach a wider readership beyond the domestic Japanese market. Ikegame also talks of her hopes for greater rapprochement between the natural sciences/engineering and the social sciences/humanities, with a particular view to fostering a greater appreciation of socio-cultural diversity.
Please also see the first half of the interview here.

ー 方法論や学際的な研究についての意見を聞かせてください。
額定其労:人類学の私のイメージは、パワフルであっちこっち行って、なんでもできるという。

池亀:そのよさですよね。でも、それが逆に悪さでもあって、これが人類学ってないんですよ。唯一人類学しか持っていないのって、親族研究ぐらい。そこは他の分野の人はやってきていないことだと思いますけど、あとのことは社会学の人もやるし、歴史や法学の人だって人類学的に文化とか社会をみている。

額定其労:社会のなかで社会学とか法学とかでは対象にならない、周縁化されたところをみて、調査して、記述する。そういう部分も人類学の貢献できるところだと思います。あとは個人の人を対象とすることも多いですよね。

池亀:フォーマルな定義では外れちゃうようなことに、「いや、どうでしょうか?」っていうことは人類学ではやりやすいのかなあ、と。

額定其労:テーマや目的をきちんと設定すれば、アプローチのしかたはどちらでもいいと思います。法学っていうのは、自分のフィールドがしっかりあるから、完全にそこの理論に寄りかかるとその中からなかなか出られない。その逃げ道として法社会学や法人類学があって、特に人類学の方はモラルや規範も法として扱う、とても広い「法」です。私は法をもっと広い視点でみるということは可能だと思っています。アジアの歴史的な法を、現代的な法の立場からみるとうまくいかない、要するにやりにくいんです。そもそもヨーロッパ法の理論とは全然違うタイプで、ローマ法を持ってきても噛み合わない。なので、アジアの昔の法をみるときに法制史でやっているのが固有法、それぞれのコンテクストでみるというのがひとつ、もうひとつはいろいろな国を比較してみる、この2つの方法があると思っています。

池亀:南アジア研究って、特に人類学、歴史学、社会学の人と一緒にやってきている伝統みたいなものがあって。それに宗教学、ポリティカル・サイエンスの人とかも。多分野の人といるというのは比較的普通のことというか、結構話が通じる。それがひとつ地域研究の利点、強みかなと思います。

ー 趣味について教えてください。
額定其労:YouTubeでドキュメンタリーを見ることですね。最近見ているのは北アメリカの野生の馬や、オーストラリアのらくだについて。昔はサッカーをやっていましたが、最近は全然やっていないです。

池亀:編み物、歌舞伎、着物を着ること、書道、写真、いろいろやっていますね。とくに編み物で靴下を作ること、歌舞伎は観ながら死にたいくらい好きです。

ー 学環の将来についての期待などを教えてください。

池亀:英語でもっと発信していくと学環の可能性がさらに広がりそうです。

額定其労:そうですね、日本の研究者は国内のマーケットに満足してしまう傾向があると思います。人口も、大学も多いですしね。

池亀:あと、もうちょっと理系の人にも文系のことに関心を持ってもらいたいなと感じます。理系の人でも、今の社会でこういうものが必要だからこういうことをしたらどうだろう、というものがあるわけですよね。当たり前だと思っていることが韓国に行ったら全然違う、インドに行ったらもっと違うとか、そういう柔軟性というか、「今」というものの理解の多層性をほんとうは歴史とか社会学とか地域研究っていうものが教えられるはずだと思うんですけど、なかなかそういうふうになっていない気がしています。

※インタビュー前編は、こちらからご覧になれます。

聞き手:鳥海希世子(特任助教)
文章構成:潘夢斐(博士課程)
写真撮影・英文要約:宝麗格(博士課程)
英文校正:デイビッド・ビュースト(特任専門員)