July 20, 2017
AI をめぐる近未来社会のスケッチに向けて(NECとの合同セミナー)Sketching the near future of society in relation to AI (joint seminar with NEC)
It is said that AI (Artificial Intelligence) will be used in various situations in our lives and penetrate deeply into our society in the near future. The III and NEC will start a joint research project in 2017 to examine ethical, legal and social issues (ELSIs) of the coming society in relation to AI. Moreover, the project will aim to consider how social norms or common ideas will (or will not) change, and sketch the future society we want to build beyond the ELSIs.
Before starting up the project, two joint seminars were held in January 29 and March 4, 2017. In the first seminar on January 29, a lecture about the social history of media technology since the late 19th century by Shin Mizukoshi, a professor of the III, was followed by a workshop focusing on four issues: safety, cyber security, digital health and smart transportation. In the second seminar on March 4, map-making workshops were implemented. One was about the image of NEC as a company, and the other was about the AI technologies developed by NEC. In these workshops, participants from both the University of Tokyo and NEC conducted group-work in mixed-member teams.
わたしたちの生活のさまざまな場面にAI(Artificial Intelligence)が活用され、社会に深く浸透する未来が近く来ると言われています。東京大学情報学環とNECでは、2016年に戦略的パートナーシップ協定を結び、その一環としてAIが実用され、普及する近未来の「倫理的・法的・社会的課題」について考える共同研究を2017年度以降にスタートさせます。それに先立ち、2017年1月29日(日)と3月4日(土)に合同セミナーを開催しました。
1月29日は、冒頭で水越伸(情報学環教授)が19世紀後半以降のメディアの技術社会史についてのレクチャーを行いました。NECからは中央研究所を中心とする首脳陣8名が、東京大学からは情報学環・学際情報学府を中心に多様な研究領域の若手研究者、大学院生の12名が参加しました。その後、NECの用意したAIに関する4つの技術課題(セーフティ、サイバーセキュリティ、デジタルヘルス、スマート交通)をめぐる「4つの技術課題をめぐるミニワークショップ」を実施しました。NECと東大それぞれから2、3名ずつが混ざった1チーム5名のグループをつくり、まずNECの担当者が約10分間で4つの技術課題について概説をし、それに対してグループ内で質問やディスカッションを行いました。結果として、それぞれの技術に対するNEC側の意図、構想、認識やイメージと、東京大学側のそれとの間にさまざまなズレや相違が見出されました。今後の本格的な共同研究に向けて、これらをネガティブにとらえるのではなく、科学技術と社会文化を架橋しうる要因としてとらえ、抽出していくことが重要だと感じました。
3月4日(土)には、「NECのイメージマップづくり」と「NECのAI技術マップづくり」という2つのワークショップを実施しました。この日もNECから10名、東京大学からは13名が参加しました。「NECのイメージマップづくり」は、NECという企業に対して持っているイメージを、模造紙にキーワードをあげながら可視化するグループワークです。NECの他に日立、Google、マツダについても同様の作業を行いました(NECの関係者はNECのイメージマップづくりには参加しない)。マップをつくっている間、参加者のあいだでは各企業のイメージに対する雑談がたえず、世代や性別、国籍、キャリアなどによって企業イメージに違いがあること、一方で共通性もあることが表現されました。とくに、NECの参加者がNECのイメージを確認する機会となっていました。
続く「NECのAI技術マップづくり」では、NECのAI技術とはなにか、他にくらべてどのような独自性や可能性があるのか。NEC側のメンバーが3チームに分かれ、それぞれが発表、東京大学側のメンバーが質問を行い、ディスカッションを展開しました。これは、 東京大学側のメンバーがNECのAI技術について理解する機会となったと同時に、NEC側のメンバーが、AI技術を多領域の研究者や一般市民(ユーザーや生活者ともいえる)に対してどのような方法で説明をすればよいのかを再検討する機会となりました。
情報学環とNECの共同研究が目指すのは、AIやロボットという新しい技術が普及することで生まれる社会的課題の先に、わたしたちがどのような社会をつくりたいのか、これまでの社会規範や社会通念がどのように変化するのか、もしくは変化させればよいのか、それらの近未来像をスケッチすることにあります。AIをめぐる近未来社会の新しい価値やその創造に関わる、野心的な学際研究となる予定です。
記事:佐倉統(教授)、水越伸(教授)、鳥海希世子(特任助教)
主担当教員Associated Faculty Members
教授
佐倉 統
- 文化・人間情報学コース
- アジア情報社会コース
Professor
SAKURA, Osamu
- Cultural and human information studies course
- ITASIA program