東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

講師

上村 鋼平

Lecturer

UEMURA, Kohei

  • 生物統計情報学コース

研究テーマ

  • 生物統計学: 臨床試験のデザインと解析
区分:
特任・非常勤
  • Biostatistics and bioinformatics course

Research Theme

  • Biostatistics: Design and Analysis of Clinical Trials
Position: 
Temporary & Part-time Faculty
略歴

2009年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了.博士(保健学).
2009年~2014年 医薬品医療機器総合機構 新薬審査第四部 生物統計担当.
2014年~2017年 同再生医療等製品審査部,ワクチン等審査部 生物統計担当.
2017年~現在 東京大学情報学環特任講師.

Biography

Kohei Uemura is a project lecturer at Biostatistics and Bioinformatics Course, Interfaculty Initiative in Information Studies, The University of Tokyo. He received Ph.D. from Graduate School of Medicine, The University of Tokyo. His research key words are biostatistics, clinical trial methodology, interim analysis, adaptive design, biomarker and Bayes statistics. He was a biostatistics reviewer of Pharmaceuticals and Medical Devices Agency. His areas in charge were infectious diseases, respiratory diseases, rheumatoid arthritis, allergic diseases, vaccines, regenerative medicine, biosimilars, etc.


生物統計学とは,医療・健康科学分野を対象とした応用統計学であり,臨床研究や疫学研究における研究デザインと統計解析の方法論を研究する学問です.医薬品開発の場面において,開発成功確率の低下や開発コストの増加等を背景に,効率的な開発戦略・方法への関心が高まっています.本研究室では,臨床開発の効率化と臨床研究の推進へ貢献することを目標として,アダプティブデザインやベイズ統計学を応用した臨床評価法の開発・研究を行っています.

バイオマーカーを利用した臨床試験方法論

近年,遺伝子バイオマーカーを利用した抗がん剤の開発だけでなく,血中好酸球数等のバイオマーカーを利用した重症喘息等に対する生物学的製剤のような抗がん剤以外の領域においても,バイオマーカーを利用した開発が注目されています.優れたバイオマーカーによって,医薬品の有効性が明確に発揮される集団が特定できれば,開発の成功確率や統計的に有意な差を得るのに必要となる症例数といった観点から,効率的な臨床試験の実施が可能となり,また,当該医薬品のベネフィット・リスクバランスも向上します.さらに,製造販売後,個別化医療の推進とともに適正使用がなされれば,医療費削減への寄与も期待されています.一方,優れたバイオマーカーを見出すためには,医薬品の有効性との関係を明らかにする必要があるため,検証的な第Ⅲ相臨床試験において,バイオマーカー陰性集団のデータを効果的に取る必要性が考えられます.バイオマーカーを利用した臨床試験方法論の研究開発を行っています.

ベイズ統計学を応用した臨床評価法

再生医療製品は,条件・期限付き承認制度を有する領域であるが,有効性評価の具体的な基準または方法論が未だ十分に検討されていないことがしばしば問題となっています.また,国内の開発の現状としては,医薬品と同様に確固たるエビデンスを積み上げることが困難なケースも多いです.一方,国内の再生医療製品の開発を推進し,患者さんに安心して使用して貰うためには,一定の科学的な水準に基づき,エビデンスを構築することは不可欠と考えられることから,既存のフレームワークとは異なる,統計的な評価基準の開発が望まれており、ベイズ統計学を応用した臨床評価方法の研究開発を行っています.

ベイズ流のアダプティブデザイン方法論

アダプティブデザインとは,臨床試験実施中のある時点までに集積されたデータに基づき,試験デザインの一部に係わる,何らかの決定又は修正の判断を行う機会を有する臨床試験デザイン方法論です.例えば,試験の規模が大きく,患者さんの生命予後等の長期的アウトカムに対する治療効果を調べる場合,試験データを科学的に妥当な方法によってモニタリングすることが一般的です.臨床的に許容できない程明確な群間差が認められていて,かつ試験を継続しても結論が変わり得ないことが統計的に保証される場合,試験を継続すること自体に倫理的な問題も発生します.このような状況が想定可能な臨床試験の計画では,統計的に妥当な方法論に従った,試験の中止基準が計画されるが,当該試験法もアダプティブデザインの1つです.アダプティブデザインには,統計的な差を見るために必要な被験者数,臨床的に推奨される薬剤用量群の候補,バイオマーカーに基づく解析対象集団等にかかわるものも提案されています.しかし,中間解析データに依存した意思決定・修正には不確実性が伴うことが問題視されています.アダプティブデザインの弱点を踏まえ,ベイズ流に事前情報を活用することにより,中間データに由来する不確実性を低減し,結果的に,効率的な試験の実施に繋がるベイズ流のアダプティブデザイン方法論の研究開発を行っています.