東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

教授

植田 一博

Professor

UEDA, Kazuhiro

LAB WEBSITE

植田一博研究室
http://www.cs.c.u-tokyo.ac.jp/

  • 総合分析情報学コース

研究テーマ

  • 人と社会の知能を科学する
区分:
学内兼担・授業担当教員
  • Applied computer science course

Research Theme

  • Science of Human and Social Intelligence
Position: 
Affiliated Faculty
略歴

博士(学術)(東京大学)

1963年 生まれ

1993年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 博士課程修了、博士(学術)

1994年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 助手

1999年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 助教授

2010年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 教授

2010年 東京大学大学院 情報学環 教授

主要業績

詳細な業績は植田一博研究室(研究成果)をご覧ください。


植田研究室では、人間の認知活動の解明とその工学的な応用や社会への還元を目指して、認知科学、認知神経科学、知能情報学、行動経済学分野の実証的な研究 を行っています。実験室実験だけには拘らず、実世界で生じている認知現象や社会現象を科学的に捉えることに特に重きを置いて研究を行っています。具体的に は、現在進行中の具体的な研究プロジェクトとして以下のものがあります(一部しか紹介できないので、詳細は研究室HPをご覧下さい)。配属学生はこれらの プロジェクトに加わるだけでなく、独自のテーマを設定しても構いません。特に学際的なテーマ(例えば芸術表現と錯視に関わるテーマ)を設定することが推奨 されます。

 

(1) 需要側イノベーションの分析(Demand-side Innovation)

既存のイノベーション研究では供給側に焦点があたりがちでしたが、実際には、製品・技術の新しい使い方が消費者により発見され、普及伝播する過程 で、消費者自身によってその製品・技術の意味や価値が再解釈・再定義されて、結果的には予想を超えた大ヒットに至る場合があります。我々はこのような現象 の事例検証と、この現象を可能にする個人の認知メカニズムや社会的なネットワーク構造を、実験やインタビュー等により明らかにしています。

 

(2) 速読や珠算などのスキル熟達者の脳内機序の解明

一般に人は約400~500文字/分程度の速さで文章を読んでいることが知られていますが、視覚訓練などの結果、理解を損なわずに10,000文字 /分以上の速さで文章を読むことができる速読者が存在します。我々は、このような速読者の認知メカニズムを解明することを目指しています。アイカメラを用 いた速読者の眼球運動の特徴分析、近赤外光脳機能計測装置を用いた速読時の脳活動の解析、視覚的探索課題を用いた速読者の視覚的注意の分析など、多面的な アプローチにより検討しています。

 

(3) 日本の伝統芸能における身体性と表現の認知科学的分析

文楽とは、言語情報を用いずに3人の人形遣いがイキを合わせて、人工物でしかない文楽人形をあたかも人が動作しているかのように操作する日本独自の 伝統芸能です。この文楽人形の動作解析ならびにそれを演じる人形遣いの動作・生理計測を通じて、人形の動きのいかなる要素によって我々は人形に人間らしさ を感じているのか、人形を複数の人間が言語情報なしで巧みに操るための協調メカニズムとは何か、を科学的に分析しています。

 

(4) アニマシー知覚研究

我々は人工物に生物らしさを感じることがあります。このような知覚はアニマシー知覚と呼ばれ、社会的な知覚の基礎になっていると考えられています。 植田研究室では、ロボットと実際の生物を使って、その動きや外見を変化させることで、人工物に対してアニマシー知覚を感じる人工物側の条件と、そのときの 人の脳内メカニズムを、行動実験ならびに脳波計や近赤外光脳機能計測装置を用いた認知神経科学的計測によって行っています。

 

(5) 錯視に関する研究

図のような、それぞれに黒い弧をもち、青、黄、赤紫で60度の扇形に塗り分けられた回転盤を回転させると、黒い弧が回転することによって3つの同心円(リ ング)が見えます。しかも、この3つのリングには色(黒い弧が属する扇形の色の補色)がついて見えます。このリングは静止しているときは黒い色をしている ので、リングに見える色は心理・生理学的に観察者の脳内で作られた錯覚の色です。これが私たちの見つけた色錯視で、2009年のVisual Illusion Contestの最終選考にノミネートされました。現在は他にも錯視現象を発見しています。