東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

准教授

酒井 麻千子

Associate Professor

SAKAI, Machiko

  • 社会情報学コース

研究テーマ

  • 知的財産法(特に著作権法)
  • 情報法・政策
区分:
学環所属(基幹・流動教員)
  • Socio-information and communication studies course

Research Theme

  • Intellectual Property Law, Copyright Law
  • Information Law and Policy
Position: 
III Faculty (Core & Mobile)
略歴

2007年 東京大学法学部卒業
2014年 東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学
2014年 東京大学大学院情報学環助教
2017年 東京大学大学院情報学環特任助教
2019年 東京大学大学院情報学環准教授

Biography

Machiko Sakai is a associate professor in Interfaculty Initiative in Information Studies (III) at the University of Tokyo, Japan.
Her research interest is copyright issues posed by characteristics of digital/analog media.
She received Master degrees in The Socio-information and Communication Studies from Graduate School of Interdisciplinary Information Studies at the University of Tokyo. She joined III as a assistant professor in 2014.


◯情報学環・学際情報学府で法学を研究するということ
 「法学」と聞くと、特殊な法律用語を含む条文を手繰り、堅苦しい言葉で書かれた裁判の判決文を読み、固定的で小難しい法律の議論をする、といったイメージを持たれるかもしれません。もちろん、既に決定された条文や判決を検討することは、法学を学ぶ上でとても重要なものです——しかし、法は社会を規律する道具の一つとして、社会で起きている事象と関わりながら適用されるものでもあります。様々な技術革新やそれに伴う社会の変化に法を対応させるためには、変動した状況を正確に理解する、つまり技術的知識や社会の受容態様についての知見が必要です。
 たとえば、現行日本著作権法の制定は1970年ですが、当時は当然今のような情報通信技術もなく、コンピュータも普及しておらず、スマートフォンもありませんでした。著作権法が規律する、作品の創作・発表(流通)・利用の態様も、昔と今とでは大きく異なります。したがって、単に条文や判決の理解というだけでなく、新技術とそれがもたらす環境をきちんと把握し、これまでの著作権法の世界にどのように接合するか、あるいは著作権法をどのように塗り替えていくか、といった試みが必要とされるのです。これは著作権法に限らずほぼ全ての法律分野に該当します。さらにいえば、これは現代に特有の現象でもありません。18〜19世紀から始まる近代法の制定以降を取っても、新たなメディアやジャーナリズムの登場に対応するため、法律の改正や新法の制定、そして法概念の導出がなされてきました。
 法学と他の学問領域との接続を意識しながら法を検討することは、情報学環・学際情報学府という場所で法学を研究することの意義の1つであると言えるでしょう。

◯研究テーマ
 私自身は、写真の著作権に関心があり、これまで検討を重ねてきました。著作権法では、写真はカメラ=機械を用いて撮影を行うという性質上、絵画や版画といった人の手によって「画」を生み出したり複製したりする手段とは異なるものと考えられています。つまり、写真を、機械的性質を有する創作・複製手段であると位置付けることで、著作権法において写真は他とは違う、少し特殊な解釈がなされているのです。このように、法があるメディアを捉え定義づける営みを検討し、法において暗黙の前提となっているメディアへの視点を明らかにするとともに、他の研究領域との接点を提供しようと考えています。

◯大学院生の皆さんへ
 学生の皆さんには、自分の接する法律上の問題に対して抱く「違和感」を大事にしてほしいと思っています。たとえば、「このようなコンテンツの使い方は著作権法的に大丈夫か?」といった問題は日常生活でしばしば生じます。その際、著作権法を勉強することも大事ですが、「著作権法の説明は理解したけれど、それは妥当だろうか」という「違和感」を覚えることがあります。それはきっと研究テーマの種です。法学の知識をじっくり眺め、必要があれば他の学問領域の知見を結びつけて、多角的に、また論理的に検討し、妥当である、納得感のある理論を構築することが求められています。難しくも楽しい研究の世界へ、一歩足を踏み入れてみたい学生の皆さんの参加を歓迎します。