東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

September 14, 2017

教員インタビュー 池亀彩 & 額定其労 准教授 (前編)Interview with Associate Professor Ikegame, Aya & Khohchahar, Chuluu E. (Part1)

国境を越えて、豊かな人文知の視点で社会を見る
池亀 彩(IKEGAME, Aya)准教授 ✖︎ 額定其労(KHOHCHAHAR, Chuluu E.)准教授 対談 (前編)

国境やディシプリンの隔たりは関係なく、地球や学問の世界は繋がっています。
国際経験の豊富な額定其労先生と池亀彩先生へ、研究者への道や方法論、学環への期待などについて伺いました。

An interview with Associate Professors Khohchahar, Chuluu and Ikegame, Aya who talk about their academic life and provide abundant information related to their understanding of doing research and expectations for the academic world. Khohchahar’s research focuses on 3 main topics: the comparative legal-historical study on court cases in early modern Asia, empire and justice, and Mongolian legal history. Ikegame’s research field is in South India with which she has been developing a long relationship through her social anthological research including a recent focus on “guru” (religious leaders). Both researchers’ perspectives have been shaped by various and multiple dynamics related to their international experiences regardless of the borders and discipline gap. Despite the apparent breadth of their academic tracks, it is possible to discern unifying elements in their initial interest and their initiative to expand their vision through rich multidisciplinary reflections. Related to their multi-linguistic background, they believe that one can diversify one’s way of thinking by studying and manipulating new languages ​​in various countries and regions. Ikegame especially points out that to learn languages ​​is also to learn the culture of the country; the ability to use the local language brings one closer to the people living there. (Continue to Part2)


ー 最初に、研究テーマについて教えてください。

額定其労:三つのテーマについて取り組んでいます。前近代アジアにおける裁判の比較研究、帝国と正義、そこでの民族の多様性、それからモンゴルの法と歴史です。歴史に主眼を置いていて、正義や法と社会との関係について、原典資料を読みながら研究しています。

池亀:専門は社会人類学で、調査地は南インドです。最近は「グル」と呼ばれている宗教リーダーについて調査しています。彼らは紛争や争いを解決する法廷を作っていて、インフォーマルな「法」や「正義」のシステムに関心があります。その前はマハラジャの研究をしていて、帝国下における小さな権力のあり方というか、イギリス帝国とインドにもとからある権力との補助関係などをみていました。他にも差別の問題、これは深い意味での宗教、例えば「けがれ」という概念をインドと日本で比較するということもしています。

額定其労:池亀先生はフィールドワークでいろいろな「生」の情報を得ていますよね。私の場合は歴史資料が主なソースとなります。

池亀:私も19世紀末くらいからの歴史資料は使います。やっぱり時代をかなり戻らないと、「今」のことも分からないと思うんです。時代によって資料の量と質の差もありますね。例えばインドだとイギリス統治下の時の資料というのは意外と沢山残っている。でも1947年以降というのは、国家が行う記録を通じた支配みたいなものの質がちょっと変わるというか、新しい時代の方があまり残っていなかったりします。

ー 現在の研究テーマに出会った経緯について聞かせてください。
額定其労:最初は「国際弁護士」を目指して日本に来ましたが、受け入れ先の先生がいらっしゃらず、その後青森大学で「環境社会学」を勉強していました。そのあと、北海道大学と京都大学で「人類学」に入りました。「モンゴル」に対する興味や研究の楽しさもそのころに感じ始め、研究者になることを目指しました。

池亀:修士まで建築史をやっていました。建築って理系ですけど、文系っぽいところもあると思います。私は建築史の研究室にいたので、あまり今と読んでいるものも変わらないかもしれない。アジアの建築史、10世紀頃のインドの古典建築書などを読んでいました。あとは現地に行って、測量したり。朝4時くらいにトラックにつぎ込まれて、山の奥の方で。最初にインドに行ったのは卒論の時で、アジアの様々な国に行くということには慣れていたかもしれないですね。

ー お二人とも多数の言語を操り、多様な国や地域での生活、研究経験があります。
額定其労:一つの言語は一つのロジックですよね。新しい言語を勉強することで、考え方を多様にできる、思考を豊かにすることができると個人的には信じています。例えばスペイン語が分かった場合には、スペイン語で書かれた専門書が読める、それによって学問の幅も広くなる。現地の文化や背後にある思想もより分かるようになり、学者にとっては大きな財産だと思います。

池亀:親戚の遠縁のおじさんで、13ヶ国語くらいできた人がいたんです。数学者なんですけど、そこが標準になってしまって。4、5カ国語くらいでは褒められたこともないし、10以上いかないと(笑)

額定其労:言語学者とか歴史学者の前で、私5、6カ国語知っていますって自慢できないですよね。みんな10、20と知ってるから(笑)

池亀:ベルギーの人って、ふつうの人でもミニマムが3か4。南インドでも、私のお掃除に来てくれるお姉さんとか、文字は書けないんですけど、4カ国語くらい喋るんですよ、全部インドの言葉ですけど。多言語が当たり前の人たちってけっこういますよね。言語を学ぶことは、その国の文化を学ぶことでもあるので、喋れるとそこの人にちょっと近づけるような感じはあります。

額定其労:人類学では大事ですよね。

池亀:そう、人の話のリズムを崩させない、っていうんですかね。調査のときでも、珍しい言葉であればあるほど、「自分の言葉をそんなに勉強してくれたんだ」って、初めの一歩としてポジティブな関係性ができる。

後編へ続く)

聞き手:鳥海希世子(特任助教)
文章構成:潘夢斐(博士課程)
写真撮影・英文要約:宝麗格(博士課程)
英文校正:デイビッド・ビュースト(特任研究員)