東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

研究Research

June 22, 2017

中山隼雄氏 インタビュー 「たかが遊び、されど遊び」の場に寄せてInterview with Hayao Nakayama

情報学環オープンスタジオ「中山未来ファクトリー」竣工にあわせ、オープニングレセプションにて寄付者である中山隼雄氏に佐倉学環長がお話を伺いました。

An interview with Hayao Nakayama, the founding president of Sega Enterprises Ltd. who donated funds for the brand new Open Studio, iii UTokyo. In an interview with Osamu Sakura, the Dean of iii, Nakayama talks about the Open Studio as a playful and experimental space to learn games, business and collaboration to generate new ideas. He also emphasizes that “good games” always reflect the trend or culture of the age. Please also see “Open Studio, iii UTokyo Opening Reception”.

——なにかこういうプロジェクトがあるといいとか、ご希望はありますか?

こういうことやってくれっていうよりもね、学生の時から早めにゲームに親しんでいくっていう。今は素人がどんどんゲームを作れる時代だからね。だから、慣れてくれればいいと思ってますよね。ゲームは遊ぶもんじゃなくて、つくるもんだって。

——昔とは違う?

昔はね、自分だけでやっていればよかったんですよ。「オレいま一生懸命やってるんだから邪魔しないでくれ!」ってね(笑)。また、二人や三人でやるにしてもそうだった。でも今は違うんですよ。全然知らない人とやるとか、「ポケモンGO」がいい例ですけどね。とにかく友達がやってるからやろうとか、情報共有の場になっているんですよね。相変わらずコアユーザーっていうのはいるんですよ。でも、大多数のゲームをやっている人っていうのはね、今は“ゲーム+情報共有”なんですよね。

——お互いの、ということでしょうか?

お互いの。あの人がやってるから負けてられないとかね、この人がやってるんだったら自分もやらないといけないとか、そこが違うところ。そういう風にどんどん変わってきてるからね、そういう感性は学生時代に自分でつくってみて、どう評価されるかっていうのを体験してみるといいと思うんだよね。

——そうすると、ゲームをつくるプログラミングとかデザインの技術だけではなくて、コミュニケーションがどうなっているか、という部分も理解する必要がある?

そうそう。だからね、アイデアが一番大事。アイデアがあって、それをゲームに落とし込むときにはつくる技術が必要になってくる。デザイナーが必要だし、プログラマーが必要だしね。でも最初にこういうものが面白いんじゃないかっていう、アイデアが一番大事なんだよね。

それからゲームっていうのはね、いま当たってる「A3!」とかいうゲームがあるんだけど、基本は「たまごっち」なんですよ。育てるんですよ。ただ昔はね、単に卵をひよこに育てるだけ。今の「A3!」っていうのはね、自分の好きなタレントを育てて、舞台に出させて、それがさらに活躍していくっていうね。原理は同じなんだけど、時代を反映してるんだよね。つまりAKBが素人からアイドルになっていくのと同じように、素人を育てて応援していくっていうね。まさにゲームっていうのは時代を反映してるんだよね。

今日も昔のゲームクリエーターと話してたんです。そいつは優秀だったんですけども、結局会社を倒産させてね。それはなぜかっていうと、時代の流れを読めないんですよ。彼のいう「いいゲーム」っていうのがね、僕らがいま考えてるいいゲームとは全然違うんです。だからダメなんですよね、いいゲームがつくれない。

——やっぱり常に新しい考えが入っていかなくちゃいけない?

時代の流れのなかでの「いいゲーム」が何かっていうことがわからないと、どういうゲームが面白いのかっていうのがわからないとね。でも、若い人たちは時代のなかに生きているわけだから。

——なるほど。

だから、こういうのが面白いんじゃないかとかね、自然とわかってるんですよ。ちょっとゲーム好きな人はね。

——さっきオープンスタジオのスタッフが自己紹介していましたけど、ワークショップとかをやっている人がいて。どうしても専門が進んでいくと範囲が狭くなっちゃう。違う人とか、一般の人とかが入っていろんなアイデアを出すことで場を活性化させるような、そういう研究が専門なんですね。そうするとここで、もちろん東大生が中心になるんですけれども、一般の人とかも入ることによって、先ほども仰っていたような、新しいゲームのアイデアみたいなものが出てくるといいなと思っているんです。

そうね。ゲーム好きな人はわかると言ったけどね、もちろんじゃあどんなゲームをつくろうかってなった時に、パッと思いつく人もいればね、何をやったらいいのかわからない人もいる。でもこういうところに来て、みんなと話したり、最近こんなゲームができてるんだなとか言いながらね、ミニゲームをつくればいいと思うんだよね。

——なにか思ってはいるけど、かたちにできないような学生とかも刺激を受けて、いろんなアイデアがここに来ると出てくるような。

ゲームの成り立ちっていうのはいろんな勉強になると思いますよ。ビジネスも、学校で学べないようなことも含めて。一人じゃできないからね、ゲームなんていうのは。だからここで実験的にね、いろんなことを好きにやってね、遊びながら。「たかが遊び、されど遊び」ってね、そんなふうにここがなることがね、教育の場としてもいいと思いますよ。ただね、勉強ばっかりでかわいそうだから遊びの場をつくってやるっていう、そんな軽いものじゃない。ここも教育の場だからね、教室では学べない教育の場だからね。

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情報学環オープニングスタジオ オープニングレセプション」(5月25日)

聞き手:佐倉統(教授)
編集・構成:岡田美保(学環長秘書)、鳥海希世子(特任助教)