東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

教授

佐々木 正人

Professor

SASAKI, Masato

研究テーマ

  • アフォーダンスと表現
区分:
学内兼担・授業担当教員
所属:
教育学研究科

Research Theme

  • Ecological Psychology
Position: 
Affiliated Faculty
Department: 
Graduate School of Education
略歴

1952年北海道生まれ。筑波大学大学院博士課程中退。早稲田大学助教授などを経て、本学教育学研究科教授。情報学環の創設に加わる。著書、訳書に「アフォーダンス入門」、「レイアウトの法則」、「デザインの生態学」、「アート/表現する身体」、 「ダーウィン的方法」、「伝記ジェームズ・ギブソン」、「生態学的知覚システム」など。


ヒトや動物が、意図を実現するとき、同時に周囲の環境の性質が発見されている。それがアフォーダンス(affordance)である。

たとえば、渇きを癒す、汚れを落とす、冷やす、あるいは温める、その上に何かを浮べて移動する、溶かすなどは、水とともに具現する意図である。どれも水の意味、水のアフォーダンスである。アフォーダンスは行為と環境の両方を含意している。

アフォーダンスの観察例を示す。カブト虫(♀)を仰向けにして、床上に置くと、背が湾曲 し、短脚なので、起き上がることができない。そこで虫のそばに多種の物を置いてみた。「うちわ」では、その縁と床の隙間に脚の先端を差し入れ、そこを支点 にして全身が一気に前のめりに起き上がった。「シソの葉」では、重い葉柄部が上になるように抱え、左右へと揺らし、横倒しに、「フイルムの蓋」では、蓋を 全身で抱え込み、その下を移動しながら、蓋と床の隙間から身体を抜き去るようにして起き上がった。

図に3種の起き上がりを周囲とともに描いてみた(「質的心理学 研究」 2011/No.10「環境の実在」特集)。いくつかのことがわかった。虫の起き上がりは、数種に限定されるだろう周囲を必要とすること。それらを探り当 てるために、行為はヴァリエーションを生み出していること。つまりアフォーダンスが、行為にヴァリエーションを与えていること、などである。

行為とよべる過程をもたらしている、身体の入れ子化の解明(動作解析装置なども使う)と、それと相補的に見出される場所レイアウトの記述が、アフォーダンスの研究には必須である。そして、行為と環境を同時に描き、発見したアフォーダンスを表現する必要もある。

上記が生態心理学の焦眉の課題である。まだ十分に成熟していないが、意図や、行為の柔軟性(選択と分岐)の理解について、モノや場所のデザインについて、何らかの独自な貢献ができる可能性はあると思う。

研究室では、概略すると、以下のようなテーマの研究が進行中である。

「発話にともなう手振り」、「建築設計行為の過程」、「映画事象の知覚」、「乳幼児の食器操作発達」、「発達システム理論」、「行為のマイクロ・スリップ」、「エコロジカルな音響学」、「文楽人形遣いの演技と呼吸」、「けんだま操作の知覚―行為カップリング」、「寝返りダイナミクスの発達」、「高次脳機能障害者のモノの配置換え」、「引越し後の家具レイアウトの持続と変化」

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図 起き上がりのアフォーダンス

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