東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 The University of Tokyo III / GSII

教員 Faculty

教授

板倉 聖哲

Professor

ITAKURA, Masaaki

  • 文化・人間情報学コース

研究テーマ

  • 東アジア絵画史の再構築
区分:
学環所属(基幹・流動職員)
所属:
東洋文化研究所
  • Cultural and human information studies course

Research Theme

Position: 
III Faculty (Core & Mobile)
略歴

1965年生。大和文華館学芸員等を経て、1999年より本学東洋文化研究所に赴任。

主要業績

主な編著に『講座 日本美術史第2巻 形態の伝承』(東京大学出版会 2005年)、『日本美術全集第6巻 東アジアのなかの日本美術』(小学館 2015年)など。


美術史学にとって不可欠なのはまず「作品記述」、作品と向き合い言葉に変換する行為です。それを前提として、作品相互の関係性を明らかにし、作品を生み出した場や背景を想定し、作品の持つ意味からその機能を論じたりします。
作品研究は美術史研究の出発点となるものですが、研究対象に中国絵画史、特に宋元時代の絵画を選びました。中国絵画史で言えば、再現性を追求した宋時代の絵画から表現主義的な元時代の絵画へ、その転換期に相当します。宋元時代の作品は、中国のみならず朝鮮や日本の絵画史においても、それ以後の絵画にとって「古典」となり、様々な影響を与えました。但し、その在り方は地域や時代によってさまざまです。これら東アジア地域において刺激を受けた作品を見ることは、元になった作品の解釈の幅を広げ、作品研究の大きなヒントを与えてくれます。それは同時に中国美術史を一国の閉じたコンテクストから解放するためにも有効な手段となります。
近年、試みているのは新たな東アジア美術史の語り口です。「一国」美術史は近代国家の要請で進展してきましたが、その限界が自覚され、その突破口として東アジアという視点が注目されるようになりました。しかし、一方でしばしば網目の粗い議論となり、作品にとっては必ずしも有効なものとなっていません。作品研究を前提にしながら、単なる影響論ではなく、作品相互の関係性を明確にすることで、実態に近い東アジア絵画史の構築を目指しています。その実践が昨年(2014年)秋に三井記念美術館で開催された「東山御物の美 足利将軍家の至宝」展であり、『日本美術全集 第6巻 東アジアのなかの日本美術』(2015年 小学館)です。前者の多くは国宝・重要文化財に指定され、中国絵画史にとって重要な作品です。同時に、日本絵画にとっても、その後の古典となって君臨し続けていきます。そうした二つのコンテクストを意識して展示を試みました。後者は、約20年ぶりに出版される『日本美術全集』の中の一冊です。対象とするのは、日本に伝来した東アジアの美術。書画で言えば、東晋の「書聖」王羲之の摸本から始まり近代海上派の巨匠、呉昌碩まで、日本における伝来に注目しながら選定しています。

流動教員として情報学環に籍を置く間、幾つかの点に注目していきたいと思っています。
まず絵画と文学、画像情報と言語情報は伝えるものが異なります。両者は非可逆であり、その関係は多様です。補完し合ったり、誤解を生じさせたりします。次にメディアです。イメージの乗り物などと言われますが、画は様々なフォーマットを持ち、様々な支持体の上に描かれます。支持体や画風と画の主題には密接な関係があり、機能によって描かれる題材は規定されています。それは鑑賞の「場」についての考察にも連なります。現存する過去の作品は、作者一人のものではありません。注文者の意図が反映されて制作されたものは、多くの人の手を経て現在に伝えられてきました。作品自体の側からすれば、それらの人々にも目を向けることが必要です。その意味で、表象・表具にも注目するつもりです。伝えてきた人々が、その作品をどう見せたかったのか、それを解くカギは作品自体だけではなくその周縁にあるということです。

2)二十世紀の言語・記号科学や思想・哲学の理論史を概括し、今日の世界における意味批判の知について、独自の理論的総合を与えようとする、意味批 判の 「メタ理論」研究

 

3)とくに、西洋および日本の近代世界において、表象や語りといった意味経験の枠組みが、いかに記号や言語の制度として成立したかを、 歴史的文化的に解明する「近代批判」研究

 

4)現代言語科学や記号論の知見を援用しながら、同時代のメディアテクストを対象に、〈ディスコース〉の記号分 析を行い、私たちの世界の意味批判の理論的パラダイムを模索しようという「メディアの記号分析」研究

 

このうち、当面、「情報記号論」の講義では、上記 2)の「メタ理論」研究との関わりで、情報科学の基本問題を考えるという側面、そして、上記4)の「メディアの記号分析」との関わりで、ディジタル・テク ノロジーに媒介された記号コミュニケーションを理解するという側面が、当面の課題となります。

 

例えば、長尾真らによる最近刊の岩波書店『マルチメディア情報学』講座では「情報が人間にとってどのような意味をもつかを考える場合、記号論的立場 を知っ ておくことが大切である」とされ、情報記号論はマルチメディア情報学の基礎理論のひとつとしての位置を与えられています。とくに、インターネットに代表さ れる新情報社会の到来をうけて、文系・理系双方の研究者・教育者に共通した、二十一世紀の基礎的な知としての総合的な〈情報リテラシー〉を構想する場合、 人工言語に基づいた情報知が、人間の社会や文化を認識するための社会知や文化知とどのように結びついたものであるのかを提示し、総合的に情報メディア社会 を理解する〈総合的リテラシー〉の確立が求められていると言われます。そのような新世紀の課題を考えるための機会として、この講義を位置づけることができ れば、というのが、現在の私の抱負です。

3-1.図録1

3-2.図録2

3-3.図録3

3-4.図録4

3-6.図録6