近世人物誌
N010
近世人物誌 やまと新聞付録 第八
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明治20年(1887)5月24日
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37.5×25.5
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某(なにがし) 少将(せうせう)の妾(せふ)
少将(せうせう)の妾(せふ) 某(なにがし)ハ以前(いぜん)日本橋(にほんばし)の芸妓(げいぎ)にて
名(な)を小勝(こかつ)と称(しよう)せり其(その)心(こころ)ばへ尋常(よのつね)の芸妓(げいぎ)
ならざるを以(も)て少将(せうせう)愛(あい)して妓籍(ぎせき)を脱(だつ)させ妾(せふ)
として任地(にんち)熊本(くまもと)の営所(えいしよ)へ伴(ともな)はれたり然(しか)るに
明治九年十月二十四日神風連(しんぷうれん)の暴挙(ばうきよ)の為(ため)に少(せう)
将(しやう)ハ重傷(ぢうちやう)を負(おハ)れ遂(つひ)に逝去(せいきよ)あリ此時(このとき)妾(せふ)ハ
東京(とうけい)の母(はは)の許(もと)ヘ「ダンナハイケナイ、ワタシハテヲヒ」との
電報(でんぱう)を送(おく)りたりと当時(とうじ)の諸新開(しよしんぶん)に載(のせ)たり
其後(そのご)妾(せふ)ハ尚(なを)同所(どうしよ)に止(とど)まりしが或時(あるとき)同県(どうけん)に巡(じゆん)
査(さ)を奉職(ほうしよく)なす何某(なにがし)が此妾(このせふ)を懸想(けそう)し思(おも)ひ
に絶(たえ)かね一日(いちじつ)面会(めんくわい)のうヘ恋情(れんじやう)のやるせなき
を吐露(とろ)せしに之を戒(いまし)め妾(せう)ハ故殿(こどの)の恩偶(おんぐう)を
蒙(かうむ)る一朝(いつてう)の事(こと)にあらず殿(との)逝(せい)せられて土(つち)
いまだ乾(かハ)かざるに御身(おんミ)と怪(け)しかる事(こと)のあらバ
妾(せう)は流石(さすが)に芸妓(げいぎ)の果(はて)なりと人(ひと)に後(うし)ろ指(ゆび)差(ささ)
れん事(こと)の無念(むねん)なり御身(おんミ)も軽重(けいぢやう)の別(べつ)こそ
あれ等(ひと)しく官吏(くわんり)ならずや此場(このば)は是限(これきり)
として人にも言(いハ)ぬ御身(おんミ)も此後(このご)を慎(つつし)み
玉はれよとありしかバ某(なにがし)ハ慙愧(ざんぎ)に絶(たへ)ず
穴(あな) 賢(かしこ)断念(だんねん)すべしとありけれバ妾(せふ)は数(かず)
ならぬ身(ミ)を斬(かく)までに思(おも)ひ玉(たま)はるこころ
ざしこそ嬉(うれ)しけれと肌(はだ)につけたる長(なが)
襦袢(じゆばん)脱(ぬぎ)予(あた)へたり其年(そのとし)某(ばう)ハ西南(せいなん)の
役(えき)に討死(うちじに)せしが肌(はだ)にハ妾(せふ)のあたへ
たるなが襦袢(じゆばん)を着(ちやく)し居(ゐ)たりし
とか